インタビューにGO!!
和泉元彌
さんにインタビュー!
伝子
能も狂言も、最初は同じと言えるのね。
GOくん
そうだね。
伝子
ところで、狂言についてもその道の人のお話を聞いてみたいわ…
GOくん
よし、それでーはーインタビューに行ってみよう!
かもめん
本日
はよろしくお
願
いします。さて、
早速
ですが、どれくらい
練習
しているのですか?
和泉元彌さん
そうですね、
基本的
には
毎日稽古
していますが、
一日
の
稽古時間
は
決
まっていませんし、
決
められません。
ただし
最初
は
外
から
通
ってくる
弟子
、
次
に
内弟子
が、
最後
に
身内
が
稽古
する
ことは
決
まっています。
私
が
小学校高学年
のころにはすでに
私
の
稽古
は
夜
の9
時
や10
時
に
始
まることが
多
かったですね。
そうそう、そのころから
父
に
「
良
い
稽古
は
短
い
時間
でしなさい」
ということを
言
われていました。
長
くなるということはそれだけなおされているわけですし、
長
くなってしまうと
集中
し
続
けられませんし、
時間
を
決
めて
取
り
組
むと
その
時間
を
どう
乗
り
切
るか
ということに
意識
がいってしまう
恐
れがあるからです。
今
の
私
も、
平均
してみると
大体
2
時間
ぐらいになりますが、
特
にそう
決
めて
いるわけではありません。
やはり「できるようになるため」と
思
って
練習
すると
集中
できますね。
あくまで、その
結果
が
約
2
時間
ということです。
かもめん
振
り
付
けはどのよう
にして
覚
えるのですか?
和泉元彌さん
狂言
の
場合
は、
「口伝(くでん)」といって
見
たこと、
聞
いたことを
真似
することで
師匠
から
弟子
へ
直接伝
えていきます。
狂言
の
家
に
生
まれると、
大体
1
歳半
のとき、
つまり
周
りの
見
よう
見
まねで
立
ったりしゃべったりいろいろなものを
吸収
していく
時期
に
正座
をすることから
稽古
を
始
めて、
徐々
にごあいさつや、
目
の
前
の
師匠
が
言
っていること、
していることを
真似
させていきます。
小
さい
子供
に
体
を
動
かすときのいろいろな
約束事
を
言葉
で
教
えようとしてもなかなか
伝
わらないですから、
真似
させるのが
唯一
の
方法
であり、
一番
いい
方法
なんです。
そして、このことは
大人
になっても
変
わりません。
師匠
から
新
しいことを
教
わるときには、
メモをとったり
写真
を
撮
ったり
録音
したりすると
記録
に
残
るから
大丈夫
だと
甘
えてしまって
覚
え
が
悪
く
なるので、
今目
の
前
に
師匠
がいる、
今
この
瞬間
に
真剣
に
受
け
取
らないと
残
せないのだ
生
きた
師匠
や、
今
この
瞬間
にちゃんと
やらないと
残
せないんだという
緊張感
を
大事
にしています。
また、そんな
風
に
師匠
から
習
った
後
は、
記憶
に
定着
させるために
何度
も
口
を
動
かして
体
に
覚
え
込
ませます。
頭
の
中
だけでやっているよ
りも
声
に
出
して
練習
した
方
が
覚
えやすいんですね
。ただ、
小声
でブツブツつぶや
くような
練習
しかやっていな
大
きく
息
を
吸
った
ときに
急
に
頭
の
中
が
真
っ
白
になってフリー
ズしてしまうことがあるので、
稽古
のとき
から
本番
と
同
じようにやるように
して
体
で
覚
え、
たとえ
頭
が
真
っ
白
になって
も
口
だけ
は
勝手
に
動
いているようにします。
かもめん
今
まであったハプニングで
困
ったことはありますか?
和泉元彌さん
難
しい
質問
ですね…。
そうだ、ハプニングとは
違
う
かもしれませんが、やはり
人間
で
すから
急
に
魔
が
差
すっていうか
稽古中
にでも
、
頭
が
白
くなったりすることはあり
ます。ですから
私
の
父
は
「
稽古
は
本番
のようにやりなさい。
本番
は
稽古
のようにやりなさい。」と
言
っていました。
練習
と
本番
は
空気感
が
違
いますから、
本番
になったときにさあ
頑張
ろうと
思
っても
稽古
でやっていないものは
出
ないんですね。
稽古
のときからどれだけ
本番
と
同
じ
緊張感
を
持
てるか、
反対
に
本番
でどれだけいつも
通
りのことをできるかが
大切
なことだと
思
います。
私
が
臆
することなく
舞台
に
立
てるのは、
私
が
小
さいときから
父
に
稽古
のときでも
絶対
に
間違
えてはいけないという
緊張感
を
出
してくれていたからかもしれません。
他
には、
狂言
は
生
の
舞台
だから
何
が
起
きるかわからないというのが
あります。
他家
と
一緒
に
舞台
に
立
つこともあるんですが、
道具
の
扱
い
方
を
間違
って
壊
されてしまったとい
うことが2
回
ぐらいありま
す。その
時
は
白
くなる
というより
青
くなりました。
でも、どんな
事
でも
糧
になるものです。
経験
の
積
み
重
ねの
大切
さ
を
実感
しました。
かもめん
狂言
はどこで
習
うことができるのですか?
和泉元彌さん
狂言
は
修行
の
世界
なので、
基本的
には
入門
して
習
うことになります。そ
れぞれの
家
の
当主
から
教
えることを
許
された
狂言師
が
開
いているお
稽古場
で
習
うことができます。
あとは、
最近
ではカルチャーセンター
などでも
伝統芸能
の
教室
が
開
かれていることがあるので、そ
の
中
で
習
うこともできますね。
そして、
大変珍
しいこ
とではありますが、
学校
で
開催
している
狂言
の
教室
があったりも
するのでそういったものに
参加
する
のも
学生
にとっては
通
いやすくていいかもしれません。
かもめん
今
までやっていて
よかったと
思
うことは
何
ですか?
和泉元彌さん
父
(
和泉流十九世宗家 和泉元秀
)は
本当
に
厳
しい
師匠
で、
100%はできて
当
たり
前
、
120%、150%を
出
さなければ
いけないという
人
でした
。いつも「
弟子
は
師匠
を
感心
させるものだ。」
と
言
っていて、
私
は
4
歳
で
初舞台
を
踏
んで21
歳
の
ときに
父
が
亡
くなったのですが、
その
中
でほめてもら
ったことは5
本
の
指
で
数
えられるぐらいしかありません。
その
数回
のほめられたときには、
師匠
であり
目標
の
人
である
父
に
認
められたということですごく
嬉
しかったですね。
あとは、
舞台
に
立
って
お
客
さんから
笑
い
声
が
返
ってきたときに、
自分
が
狂言師
として
役目
を
果
たせたな
と
感
じられる
のでやっていてよかったと
思
いますね。
というのが、
狂言
というのはアドリブが
一切
なく
昔
から
変
わ
らないものを
受
け
継
いでいるのですが、
今
の
人
には
今
の
自分
たちの
体
を
通
してしか
伝
えられないので、
客席
から
笑
い
声
が
返
ってくると、
今
の
人々
に
自分
の
舞台
を
通
してきちんと
昔
ながら
の
狂言
が
伝
わったのだなと
実感
できて
嬉
しいです。
かもめん
「
実
はこうなんです
、
狂言
。」のようなものはありますか?
和泉元彌さん
そうですね…、これも
難
しいなあ…。でもやっぱり、
狂言
は
日本
の
伝統芸能
の
中
で
唯一純粋
な
喜劇
だっていうことを
知
ってもらえたら、
そして
笑
いを
楽
しんでもらえればと
思
います。まあ
知
っ
ている
人
にとってはなんていうこともないのですが。
他
には
、
僕
は21
歳
で
父
から
宗家
を
継
いだのですが、
そのときに1
年
ぐらいかけて
書
いた
本
の
中
で
言
ったのは
「
狂言
はウルトラマンみたいなも
のだ」ということです。ウルトラマンは
外
か
ら
見
たら
同
じウルトラマンでも、
中
に
入
って
演
じるスーツアクターと
呼
ばれる
人
たちは
変
わ
りますよね。その
人
たちは
みんなそれぞれ
違
っていても、
変
わらぬ
ウルトラマンをつくるように
努力
してい
ると
思
うのです。
それと
同
じように
狂言
が、
600
年近
く
受
け
継
がれてくる
間
、
一人
の
人間
がずっと
生
き
ていられるわけではないですから、
何人
もの
人
が
同
じ
役割
を
果
たしてきまし
た。
演
じる
上
でも
先代
の
完全
コピーができたら
いいと
思
ってきました。
自分
の
個性
を
出
したいとか、
自分
だからこそ
できる
演技
がしたい
と
思
うことは
弟子
であるときに
必要
ないんです。
今
でも、「お
父
さんに
似
てますね。」と
言
われるのが
自分
にとっての
最高
のほめ
言葉
です。そして、
そうなれるためには
目
に
見
えない
心
までも
受
け
継
がなければいけません。
そのためにも、まずは
見
ること
聞
くことのできる
「
型
」を
受
け
継
がなければ、
目
に
見
えないものを
受
け
継
げるわけがない
という
考
えのもとで、
型
というものが
厳
しく
守
られています。
かもめん
次
の
目標
を
教
えてください。
和泉元彌さん
私共
和泉流
には
現行曲
という254の
演目
があって、
その
中
で
一番位
の
高
い
曲
が
狸腹鼓(たぬきのはらつづみ)という
曲
なんです。
これは
一子相伝
、つまりその
時代
その
時代
の
宗家
だけしか
演
じないものです。
これに
準
ずる
位
に
三老曲
と
呼
ばれる
三
つの
曲
が
位置付
けられていて、
すべて
老人
を主役(シテ)にしているのでこう
呼
ば
れているんですけど、
私
は42
歳
の
6
月
に
その
中
の
一
曲
である
「比岡貞(びくさだ)」を
演
じました。
40
代
というのは
経験
と
力
がいい
具合
に
交差
し
ている
脂
ののった
時期
といわれます。
そういうときに
老人
を
演
じ
るというのは
芸
の
上
で
一
つの
大
きな
壁
ですが、
私
の
目標
にしている
師匠
は40
代
でこの
三老曲
をすべて
演
じているんですね。
なので
私
も40
代
のうちに
残
りの2
曲
を
演
じられたらいいなと
思
って
日々精進
しています。
あとは、
大
きな
目標
とし
ては
長生
きをするということがあります
。
狂言師
は
元気
に
動
いていられる
間
はずっと
現役
という
世界
ですから。
また、
伝統芸能
なので
自分
の
持
っているものを
後
の
世代
に
受
け
渡
してい
くという
役目
がありますから、
自分
の
弟子
や
子供
たちだけに
限
らず
狂言
という
世界全体
を
見守
っていきたいからです。
というのは、
伝統芸能
には
歴史
があって、
長
い
間
受
け
継
がれるうちに
時代背景
や
社会背景
は
変
わっていくと
思
うんです。
それでも
変
えていいところと
変
えてはいけないところがあるんです。
それを
変
えてしまったら
伝統
ではなくなってしまう、
という
事
や、
それぞれの
時代
の
価値観
によって
揺
らいでいってしまう
事
など
もでてくる。その
時
に「そうじゃあり
ません!
正
しい
伝統
はこうですよ」という
信念
を
しっかり
持
っていれば
何世代
後
までも
正
しく
伝
えていかなければなりません。
そういうところを
見守
っていくために
も、やはり
長
く
生
きたいですね。
かもめん
では、
最後
に
若
い
人
にメッセージをお
願
いします。
和泉元彌さん
ぜひいろいろな
事
に
チャレンジしてほしいです。
若
いうちなら、たとえ
失敗
しても、
先生
やお
父
さん、お
母
さん、
保護者
に
励
まされたり、
叱
られたりしてやり
直
すことが
できるチャンスがいくらでもあると
思
います。
そして、
初
めて
見
る、
聞
く、
触
れるというときにはぜひ
素直
でいてください。
素直
でいれば
心
の
成長
は
止
まることがありません。
真
っ
直
ぐな
心
でいろんなものを
目
にしたりいろんなことを
経験
したりするとその
感動
は
鮮明
に
残
ると
思
うんです。
真
っ
白
な
心
にたくさんの
刺激
を
色濃
く
残
してもらいたいので、
たくさんのことにチャレンジしてください。
でも、そのチャレンジをするときに、
大切
なものがあります。
やるべきことなのかやるべきではないことなのかを
判断
できる
「
土台
」や「もの
さし」が
必要
です。そして、
それをつくっていくときには、
自分
だけの
価値観
、
考
え
方
だけではなく、
自分
の
家
のル
ールから
学
びながら
独自
のものを
作
っていってください。
あとは、
世
の
中
や
世界
に
出
たら、
「
自分
らしさっ
て
何
だろう?」、「
日本
らしさって
何
だろう?」
って
考
えるときが
いつか
必
ず
来
ます。
そして
他
と
触
れ
合
って
お
互
い
交流
しようとするときに、しっかりとした
「
自分
」を
持
っていないとなし
崩
し
的
に
自分
がなくなっていってしまう
ことがあります。
その「らしさ」っていうものは
そういうことに
気
づいてから
見
つけるのでもいいんですが・・・。とにかく「らしさ」が
無
いのが
一番悲
しいことです。
じゃあその「
自分
らしさ」って
どこにあるかっていうと、
たとえば
学校
。この
世界
で
今
、
自分
が
通
っている
学校
の
自分
の
学年
らしさを
持
っているのはほんの
百数十人
だけじゃないですか。さらに
他人
が
持
っていないものを
考
えれば、
自分
の
家
に
兄弟
がいればその
人数分
、
一人
っ
子
なら
世界中
で
一人
しか
持
っていない「らしさ」ですよね。だから、この
家
で
育
った
自分
だけが
持
っているものや
自分
が
置
かれた
環境
で
得
られることを
早
いうちから
意識
しておくと、
何
かのときに
自分
だからやれること、
自分
にしかできない
判断
を
見
つけていけると
思
うのです。できることってなんだろうと
悩
んだら、
自分
の「
家
」に
立
ち
戻
ればいいんです。こんなに
太
くて
他
に
誰
も
持
っていない
柱
はないと
思
います。
今
までに
話
したことをメッセージとしてまとめれば、
外
の
刺激
に
目
を
向
けつつ、
自分
らしさというものも
意識
してください、ということです。
そして、「
日本
らしさ」というものを
考
えたときに、この
国
には
狂言
という600
年
も
前
から
続
いている
世界
に
通用
する
喜劇
があることを
思
い
出
して、
日本
の
誇
れるものの
一
つとして、
狂言
も「
日本
らしさ」に
入
れてほしいなと
思
います。
かもめん
ありがとうございました。
これからの
末永
いご
活躍
をお
祈
りしております。
和泉元彌(いずみ・もとや)さん
狂言師
・
和泉流二十世宗家
。
十九世宗家和泉元秀
の
嫡男
。
祖父
は
人間国宝九世三宅藤九郎
。
修行
は1
歳半
から
始
まり、
4
歳
で
初舞台
。
以降
、
大曲
・
秘曲
を
若
くして
披
き、
24
歳
で
一子相伝
「
狸腹鼓
」
初演
。
国内外
で
狂言
の
普及
につとめている。
紅白歌合戦司会
や
大河
ドラマ
「
北条時宗
」
主演
、
ネスカフェCM
出演
。
本年
は
最奥秘曲
「
比丘貞
」を
披
き
新
たな
境地
へ。
主演映画
「さつまおごじょ」
でベルリン
国際
フィルムメーカー
映画祭短編部門最優秀主演男優賞
、
マドリード
国際映画祭短編映画部門最優秀作品賞
を
受賞
。
今秋
、
主演映画
「
忍性
」
上映
。
中学生・和泉采明(いずみ・あやめ)さんにもインタビュー!
かもめん
同世代の
人へのメッセージをお
願いします。
和泉采明さん
友達や
知り
合いが
狂言の
公演を
見に
来てくれたとき、「~がおもしろかった!」「~で
笑っちゃった!」とたくさんの
感想を
聞かせてくれます。そのような
言葉を
聞くたびに、
日本の
伝統文化に
自然と
親しみをもって
楽しむことができるのは
本当にすばらしいことだと
思います。
また、狂言は、
今のお
笑いの
原点
とも言
われます!
知識がなくても
気軽に
楽しめるのは
大きな
魅力の1つなので、ぜひおもしろい
演目をたくさん
見てほしいです。
かもめん
どうして狂言をやっているのですか?
和泉采明さん
私の
生まれた
家が
狂言をやっていたからです。
今では、
狂言というものが
自分にとってあたりまえの
生活の
一部になっています。
狂言をやっているとほぼ
毎日の
稽古や
勉強、
部活との
両立など
大変なときもありますが、
自分にしかできない
日本の
文化を
守る
使命だと
思っています。
インタビューを終えて
私たちの取材の少し前までイベントに参加されていたためそのまま和服を着ておられましたが、実際にお話をして驚いたのはお腹の底から湧き上がってくるような深くてよく通る声です。舞台の上で声を出す演劇である狂言に携わり、俳優としてもご活躍されている貫禄なのだろうと思いました。また、インタビューでは私たちのひとつひとつの質問に非常に細かく答えてくださり、伝統芸能に対する情熱やメッセージを伝えたいという気持ちが溢れていらっしゃいました。その中には、物事に対する考え方や生き方そのものに通じるような数多くの教訓が含まれており、大変価値ある貴重な取材となりました。さらに、和泉采明さんからのメッセージでは、同年代ならではの視点で大変親しみやすく、狂言への想いを伝えていただくことができました。
和泉元彌さん、采明さんお二方のお話には実際にその道に深く関わっていらっしゃるからこその説得力があり、「若い人たちに伝統芸能の良さを伝える」というコンセプトを持った私たちのWebサイトにとって非常に重要な役割を果たしてくださいました。本当に、ありがとうございました。