零戦の構造
零戦の機体の構造で最も画期的なことは徹底的な重量減量である。敵国であったアメリカ・イギリスのように戦闘機用の莫大なパワーをもった発動機がなかったための無駄な重量を許さない設計が求められていた。そのため内部に骨格を持たないで小骨は限界まで薄くされ肉ぬき穴もできるかぎり開けられていた。また組立て前に胴体外板に鋲孔をあけて胴体組立て準備の省略をねらった沈頭鋲が採用された。
翼には主翼・水平尾翼・垂直尾翼の3つある。ここでは主翼を主に説明する。まず翼の型式は、第1次世界大戦のころは、視界が良く飛行時に安定しているが着陸時に不安定な複葉型や胴体の上に翼が付く上翼型が主流だったが、当時としては最新の片持式低翼単葉(ガル型)を採用した。また戦闘機は高迎角時の抵抗を少なくするため翼を平面形から楕円形にした。次に翼自体の構造として特徴的なのは取り付け角度が一定ではなく根元から翼端に向って2.5度のねじり曲げが施されていた。このねじり曲げ翼は急上昇、旋回、着陸などをした時に翼端失速が起こらないことで零戦の俊敏な戦闘はここから生まれていたのだ。そして主翼の骨格を超ジュラルミンからより軽くて丈夫な超々ジュラルミンが採用された。また以前は着陸のためだけに使われたフラップが空戦の時に使える空戦フラップが採用された。あと母艦のエレベータに乗る際に翼端のクリアランスを保つため主翼に折り畳み装置を施した。また左の主翼についている白い棒はピトー管という。
零戦は何回もの変化があったが機体構造の基本は最後まで変わらなかった。しかし機首だけは発動機を保護するカウリング自体は変わらなかったが排気口などが著しく変化した。ここでは発動機、プロペラ、排気口、機銃に分けて説明をします。
発動機−当時の発動機は、空冷エンジンと水冷エンジンの2種類があった。水冷エンジンは燃料が
凍りやすかったそのため日本では空冷エンジンが主流になっていたため零戦は空冷星型エ
ンジンを使用した。使われた発動機の機種は三菱の瑞星13型と金星62型、中島の栄12
型、栄21型、栄31型、栄31甲型の6種類が使用された。
プロペラ−これは住友金属工業でアメリカのハミルトン社の製造権を入手して国産化した住友ハミルトン型恒
速式プロペラを使用した。このプロペラは定回転プロペラといいプロペラピッチピッチ(翼角)を遠心
力と油圧装置によって変わるようになった。
排気口−排気口は位置が著しく変化した所である。これは推力式排気管で従来は数本分を集めて集
中排気管としていたのだがこれを各気管ごとに独立させて後方にガスを噴射させてジェッ
ト効果を生まれさせた。
機銃 −機銃口もやや位置が変化したがそれほど変わらなかった。零戦の搭載した機銃は7.7o、13mm、
20oの3種であった。
前の2本の脚は主脚とよび後ろの脚は尾脚という。その主脚、尾脚ともに油圧装置の完全引き込み式で緩衡装置は主脚はオレオ式で尾脚はオレオ・空気式である。主車輪は高圧タイヤ、尾輪はソリッド・タイヤを使用した。
零戦が出現していた頃は遮風装置と呼ばれていた。視界は良好で抵抗の少ない水滴型風防であった。
初期は防弾ガラスではなくプレキシガラス・安全ガラスが使われていたが後期になると防弾ガラスが使われた。
コックピットには座席を中心として正面に操縦棒、フットペダル、計器板、照準器、左右に各種スイッチ、レバーがある。座席は軽金属製であった。操縦装置は操縦棒で昇降舵と補助翼、フットペダルで方向舵を操縦した。
このほかにも燃料を増やすための落下式の増槽や無線電話機、戦果を証明するための写真銃、射撃訓練用の吹き流し標的、爆弾、不時着時にできるだけ長時間長く浮ける装置などがある