地中海のイルカ

 

  1990年7月、シマイルカの死骸と瀕死になった個体が、スペイン東岸のバレンシアにほど近い浜辺に打ち寄せられてきた。当時は単なる自然死と考えられていたが、8月の半ばになると、まとまった数のシマイルカの死骸が浜辺に流れ着くようになった。場所もバレンシアだけでなく、北のカタロニアの海岸・マジョルカ島・バレアレス諸島とかなり広がった。大量死の原因は病気によるもので、感染したイルカは、肺組織が一部損傷して呼吸困難に陥り、行動には異常が見られた。9月末には、フランスにも死骸が流れ着き始め、数はうなぎ上りに増えていった。時を経て、イタリアやモロッコの海岸にも打ち上げられるようになった。しかし冬になるとこの大量死は沈静化していき、ついには跡形もなく消え失せたという。

 しかし、大量死は終わったわけではなかった。翌年になると再び病気は南イタリアで発生し、東へ移動してギリシャに到達した。さらに1993年にも発生し、またもギリシャ島に現れた。その後、ウイルス性のこの病気は北東の方角へ広がっていった。

 大量死が終わった時、正式に確認されたシロイルカの死骸の数は、1200頭を上まわったという。この事件の原因は、北海の大量死と同じく「ジステンパー系のウイルス」と判明したが、ここにも海洋汚染が関係していることが分かっている。打ち上げられたイルカのPCB保有量は健康なイルカの2倍〜3倍という高い値を示していた。

BACK