5 研究・評論活動その他


 戦後は、乱歩はほとんど創作活動をせず、探偵小説界のために身を捧げた。

昭和36年には紫綬褒章を授章されている。
中島河太郎によれば

「今回の授章趣旨は、『古今東西の探偵小説に関する評論、紹介をするとともに、新人作家の指導につくし、推理探偵小説界の興隆に貢献した。』(朝日新聞)から」

だ。

これは、彼が作家としての業績のみならず、評論者・指導者としても認められるだけの業績を残した事を示していると思う。

乱歩は戦時中、政治の圧力に屈して消滅した探偵小説を復興させるべくその活動に献身した。


高瀬西帆は、

 欧米の新作に触れ、その新鮮さと多彩に驚き、昔日の作品を繰り返す気のなかった乱歩は探偵小説の普及宣伝につとめた。
(中略)探偵文壇の指導・育成自分の双肩にかかっていることを自覚していたのだろう。

 と述べている。乱歩は日本の探偵小説の批評・評論も積極的に行い、探偵小説の隆盛に努めた。

中島河太郎の文章を引用すると、

   昭和中期に探偵雑誌が輩出した頃、氏は評論の筆を執ることを拒まなった。 「探偵小説傑作集」(昭和10)を編み、日本の探偵小説を論じた長篇論文は貴重な労作であるが、探偵小説の定義・形式から日本作家を網羅した論評は綿密・懇切で、氏が創作界の第一人者であったばかりでなく、研究・評論にも巍然たる高峰であった。

 
又、彼は「鬼の言葉」(昭11)をはじめとし、数多くの評論・研究を収めた作品を発刊している。

中島河太郎は、

「上述の評論は創作休止期間中の手すさびのように思われたかもしれぬが、今や海外に誇るべき探偵小説研究文献の金字塔を樹立したい。」

と評している。

この他にも「トリック集成」というトリックを類別した研究も残している。

これらの評論・研究は後世の探偵・推理作家の作品のもととなっているわけで、そうした意味でも乱歩は多大な功績を残したといえる。

又、探偵作家クラブを設立、探偵作家クラブ賞を選定したり、江戸川乱歩賞を制定した。

これらの受賞者の中から多彩な秀でた探偵・推理作家が数多く生まれて、現在の推理小説の基盤を築いているといえるだろう。