がん細胞を作らない方法の第三は、発がん物質を解毒する力をたいせつにすることです。
私たちの体は、入ってきた発がん物質を解毒する力を持っています。また、入ってきた発がん物質が細胞遣伝子と結合したり遺伝子を変化させた場合、その発がん物質や変化した遣伝子を他の遺伝子から切り離して細胞外に排除する力を持っています。また傷ついた細胞遺伝子を修理する力もあります。
このように、解毒、排除、修理する力があるので、発がん物質が体内に入ってもすぐがん細胞ができることはありません。このように体内に入った発がん物質の作用はさまざまです。一般に、発がんしかけ人物質についてはかなりわかってきましたが、発がん促進人物質についてはまだまだわからない部分がたくさんあります。今後の研究が待たれます。
ともかく取り込んだ発がん物質を解毒する力をつねに蓄えておくことが必要であり、そのためには、過不足ない食事、充分な睡眠、適度な運動によって、つねに発がん物質に抵抗できる体を維持しておくことがたいせつです。
がん細胞を作らない方法の第四は、発がんしかけ人物質と発がん促進人物質が細胞をがん化する反応を積極的に抑えることです。
発がんしかけ人物質が細胞遣伝子に作用するとき、発がんしかけ人物質は細胞のミクロソームにあるチトクロームによって活性化される必要があります。この反応が酸化反応です。そこで発がんしかけ人物質の反応を抑えるには抗酸化剤が有効ということになります。
抗酸化作用を持つビタミンE(α・トコフェロール)、ビタミンC、ブチルヒドキシアニソール(BHA)が発がんしかけ人物質と細胞遣伝子との結合を抑え、また発がん物質によるがん細胞の発生を抑制することが動物実験、培養細胞実験で確かめられています。
発がん促進人物質は細胞膜に変化を起こします。その作用をビタミンAカロチンが抑えることは実験でわかっています。カロチンを豊富に含む緑黄色野菜が、肺がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、大腸がん、膀胱がんの発生を滅らすという疫学データもあります。このようなことから、がんを防ぐにはがん細胞を作らないことがたいせつです。しかし、がん細胞ができてしまったからだめだということではけっしてないのです。