肺のしくみ3〜肺を包む胸膜〜
- 胸膜の構造
肺の表面は胸膜という滑らかな膜で覆われています。肺を収める胸の壁の内面も、胸膜で覆われていて滑らかです。肺と胸腔の間のすき間は胸膜腔とよばれています。胸膜腔の中には普通はわずかの液体が入っているだけで、肺と胸壁の表面はぴったり接しています。
肺の表面のうち、身体の中心部に向いている一部だけは胸膜に覆われず、そこを通って気管支や血管が肺に出入りしています。この部分を肺門とよんでいます。肺の表面を覆う胸膜は、肺門のところで折かえって胸壁の内面を覆う胸膜につながります。見方を変えると、肺は肺門のところを茎にして胸膜腔の中にぶらさげられた形になっています。
もし肺が胸膜腔で隔てられないで、胸壁や横隔膜とつながっていたら、呼吸運動がもっと効率的にできるようになるでしょうか。どうもそれはなさそうです。
というのは、胸壁や横隔膜が呼吸運動のために動き、そこに肺がつながっていると、肺の一部だけが引っぱられて不均一に広がってしまいます。それでは空気が肺全体に広がらないので、呼吸の効率が悪くなり、何よりも肺が壊れてしまうのです。
肺は呼吸運動の際に、胸壁の内面に沿って滑るために胸腔の広がりに合わせて形を変えることができます。肺の表面と胸壁の内面が滑らかなおかげで、呼吸運動の際に肺は無理無く広がったり縮んだりすることができるのです。
胸膜腔の内部には、わずかの量の液体が入っていて、その圧力は大気よりも少しだけ低くなっています。液体は気体とちがって体積が変わりにくく、また圧力が低いために肺が胸腔の形にあわせてぴったりと広がります。
- 肺に関する病気
肺の表面や胸腔の内面の胸膜が破れると、空気が流れ込んできて肺は縮んでしまいます。これが気胸という状態です。気胸を起こしやすい人は、背が高くてやせ型の若い人です。気胸になったときには、広がった胸膜腔の中に管をさし込んで空気を引き、肺を膨らませてやります。
たいていの場合、このようにしておくと自然に孔が閉じて気胸は治りますが、繰り返し起こる場合には、手術で胸膜が破れやすい部分を取り除いてやらねばなりません。