口の構造とはたらき




*三大唾液腺


 食物を口の中で、噛んでこね回すことを咀嚼といいます。この運動のおかげで私達は肉や野菜でも、スルメやセンベイでも、好きなものを食べることができます。健康な人は、ふだん口の咀嚼の働きをほとんど意識することはありませんが、病気などで口の働きが悪くなると、とたんにものを食べることが苦痛になります。年をとれば、たいていの人が歯を失います。また唾液がでなくなったり、舌が麻痺したりという病気もときおりみられます。そのようなときに、口のありがたさがよくわかります。

■口の働き

   口の働きによって食物は小さくちぎられて、胃や腸での消化と吸収が効率的に行われるようになります。食物を機械的に消化するのです。さらに唾液の中には、アミラーゼという消化酵素が含まれていて、デンプンを化学的に消化します。ただしその酵素の働きは食物が胃にはいると胃酸のために止るので、あまり大きなものではありません。むしろデンプンを分解した糖の味を感じて、食欲を刺激する役割のほうが大きいでしょう。
  哺乳類の口には、耳下腺、顎下腺、舌下腺という三大唾液腺が備わっています。この唾液と食物を混ぜ合わせることによって、咀嚼は速やかに行われます。下等な脊椎動物には、三大唾液腺に相当するものがないのです。

■哺乳類以外の口のしくみ

 哺乳類以外の動物では、口の外壁と天井が開いていて口の空間を閉ざすことはできません。ワニやカエルをみれば外からみても口が大きく裂けていて、明らかに頬のないのがわかります。食物を咀嚼しようとしても、食物が外にはみ出すので丸呑みをするしかありません。

■赤ん坊の口

 哺乳類の赤ん坊は、母親の乳腺からでてくる乳を飲んで育ちますが、この哺乳にも唇と頬はとても大切な役割をしています。赤ん坊は、乳首を口に含んだまま、口の中の圧力を下げることにより、乳腺から乳を吸い出すのです。先天的な奇形で唇が裂けている兎唇や、口がいが割れている口がい裂の赤ん坊が、乳をうまく吸うことができないときには、手術でなおしてやる必要があります。