糖尿病


糖尿病とは

 糖尿病は生まれつきの性質で、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働 きが不足し、体内のいろいろな物質の変化(代謝)が正常と変わった状態になってし まう病気です。この状態をそのままにしておくと、次々とからだがむしばまれ、やっ かいな病気(合併症)をおこしてきます。代謝のひずみがいちじるしくなると、糖尿 病製昏睡を起こして死亡します。インスリンが発見される以前の糖尿病の人の死因の 大部分は、この昏睡によるものでした。今日でも、療養の仕方が悪い人に、しばしば みられます。

それほど高度のひずみでなくても、代謝の乱れが長くつづくと、高血圧や動脈硬化を おこし、そのため脳卒中や心筋梗塞をおこして死亡します。

 糖尿病では小さな細い血管がおかされるのが特徴で、目の奥の網膜がおかされると 視力が低下し、進行すると目が見えなくなります。また、腎臓がおかされて尿にたん ぱくが出たり、むくみが出たりし、進むと尿毒症を起こして死亡します。神経痛や手 足のしびれを訴えるようにもなります。

 細菌に対する抵抗力が衰えるため、いろいろの感染症をおこしやすく、化膿した り、できものができたりし、肺結核にもかかりやすくなります。

 これらの合併症がときに死をまねき、寿命を短くしますが、糖尿病をよく治療して いれば、合併症はおこらないか、おこっても大事にならないですませることができま す。

糖尿病治療の基本

 糖尿病を治療するということは、先にも述べたような糖尿病の持つ代謝の乱れを、 正常な秩序ある状態にすることです。治療法には食事療法、飲薬やインシュリンの注 射などの薬物療法、運動などがありますが、これらは全て代謝の正常化をはかる手段 です。

 正しい治療を行っている場合には、代謝の乱れはほとんど完全に是正されており、 このときはもうすでに糖尿病という状態ではありません。糖尿病が治るとは、この状 態が維持されているという意味にほかなりません。

 しかし、糖尿病の人が生まれつき持っている、インシュリンの不足という性質を完 全に治すことは、今日の進んだ医学によっても不可能です。糖尿病が不治の病気であ るといわれるのはこの意味で、したがって治療は、どうしても長く続ける必要があり ます。

 糖尿病の治療は、近眼の人がかける”めがね”のようなものであるとよく説明され ます。近眼の人が自分にあっためがねをかければ、近眼でない人と同じようによく物 が見え、何の不自由も感じなくなります。糖尿病を治療するというのは、このように することなのです。したがって、近眼の人がめがねをはずせば、とたんに視力がおち てしまうように、糖尿病の治療も途中でやめれば、代謝も、もとどおりの悪い状態に 逆もどりしてしまいます。近眼のめがねと少し違う点は、めがねは、よくあっている かどうか自分でわかりますが、糖尿病の治療というめがねは、合っているかどうか自 分ではわからないことです。

 糖尿病の治療は最近すばらしく進歩し、それぞれの人に応じうるすばらしいめがね ができています。糖尿病の人は、自分にあっためがね(治療)を専門の医師に決めて もらい、そのめがねを常にかける(指示を守る)ようにすれば、十分に日常活動がで きます。