- もしもの場合は
原子力発電所では万一の事故が発生した場合にも安全におさめるため、止める・冷やす・閉じ込めるという方針の様々な対策がとられています。そして、それらの事故が発生した場合の安全性を実際に考えられるよりも厳しい条件で分析した安全解析で確認しています。
実際には起こらないような状態になった場合にも原子炉を停止する条件に当てはまることで原子炉の停止信号が出されて、その後、原子炉の停止・炉心の冷却・放射性物質の封じ込めの様々な装置が作動するのです。
- 事故名・沸騰水型軽水炉での冷却材の喪失
原子炉圧力容器につながっている冷却材の流れている配管が壊れると冷却材が流れ出し、燃料棒が冷却されなくなります。炉心の冷却能力が低下しても安全なのか解析が行われました。
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- 解析時に実際に考えられるよりもさらに厳しくされた状態
- 最も冷却材の流失量の多く大口径の再循環配管の1本が一瞬で完全に壊れる。
- 事故発生時に外部電源が失われ通常運転で使用している給水ポンプなどは冷却に使用できない。外部電源が失われたため、非常用のディーゼル発電機が作動するまでは非常用炉心冷却系(ECCS)も動かず原子炉への注水が遅くなる。
- 非常用炉心冷却系の中でもっとも冷却に効果のある低圧炉心スプレイ系は故障して動かない。
- 実際の解析で分析されたこと
- 燃料被膜管の温度の変化は被膜管の耐性よりも低い温度になること
- 水と燃料被膜管が反応して発生するさびの厚さも被膜管の強度に問題を与えないこと
- 事故後も熱の除去が長時間できる状態であること
---原子炉冷却材が喪失する---
- 原子炉の水位が低くなり燃料棒の温度が上がる。
- 水位が低くなると原子炉停止信号が出される。
- すべての制御棒が原子炉に急速に挿入され中性子が吸収される。
- ECCSが作動して原子炉内に水が注入される。
- 核分裂の連鎖反応が停止し炉心が冷却される。
- 事故名・加圧水型軽水炉での冷却材の喪失
原子炉容器には複数の一次冷却管がつながれていますが、これが壊れると冷却材が流れ出し、燃料棒が冷却されなくなります。炉心の冷却能力が低下しても安全なのか解析が行われました。
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- 解析時に実際に考えられるよりもさらに厳しくされた状態
- 最も冷却材が多く流れている原子炉容器と一次冷却材ポンプの間で大口径の一次冷却管の1本が一瞬で完全に壊れる。
- 事故発生時に外部電源が失われ通常運転で使用している充填ポンプなどは冷却に使用できない。外部電源が失われたため、非常用のディーゼル発電機が作動するまでは非常用炉心冷却系(ECCS)も動かず原子炉への注水が遅くなる。
- 4系統の非常用炉心冷却系の中でもっとも冷却に効果のある低圧炉心注入系は故障して動かない。
- 実際の解析で分析されたこと
- 燃料被膜管の温度の変化は被膜管の耐性よりも低い温度になること
- 水と燃料被膜管が反応して発生するさびの厚さも被膜管の強度に問題を与えないこと
- 事故後も熱の除去が長時間できる状態であること
---原子炉冷却材が喪失する---
- 1次冷却管が壊れ燃料棒の温度が上がる。
- 原子炉停止信号が出される。
- 制御棒駆動装置の電源が遮断される。
- 制御棒駆動装置のラッチが外れる。
- ECCSが作動し炉心を冷却する。
- すべての制御棒がクラスタが炉心内に落下し中性子が吸収される。
- 核分裂の連鎖反応が停止し炉心が冷却される。
- 事故名・主蒸気管の破断
沸騰水型軽水炉で原子炉圧力容器内で発生した蒸気をタービンに送る配管である主蒸気管が原子炉格納容器の外で壊れると放射性物質が原子炉建屋内に放出されます。その時の周辺への影響について安全かどうか解析が行われました。
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- 解析時に実際に考えられるよりもさらに厳しくされた状態
- 大口径の主蒸気管の1本が一瞬で完全に壊れる。
- 事故発生時に外部電源が失われ通常運転で使用している給水ポンプなどは冷却に使用できない。
- 主蒸気隔離弁を閉じて主蒸気管へ新たな蒸気を送るのを停止させても大気圧と原子炉の圧力が同じになるまでは蒸気がもれつづける。
- 実際の解析で分析されたこと
- 放射性物質を放出させないため新たに燃料棒を破損させない
- 周辺公衆の実行線量当量が5ミリシーベルトをこえない
---主蒸気管が破断する---
- 主蒸気管が壊れる。
- 主蒸気隔離弁が閉じる。
- 原子炉停止信号が発信される。
- すべての制御棒が急速に原子炉に挿入され中性子が吸収される。
- 核分裂の連鎖反応が停止する。