メソポタミアの粘土板(シュメール人)
両大河の水に恵まれた肥沃な沖積平野に住む農耕、牧畜、交易のためシュメール人は、ここで灌漑農業をし、運河網を作り、水の供給、洪水の調節をし、商業路として利用し、最古の都市文明を創造した。ここで使われた楔形文字は両大河で運ばれた大量の粘土で日干しレンガの建造物をつくり、都市生活の中心だった神殿経済を管理する会計簿をつけるために発明された(前4千年紀末)。前3千年紀初めから粘土版に楔形文字で書いた文書(クレータブレット)を大量につくり出し、紀元の初めまでそれは増え続け、1世紀のなかばまで約3千年間使用された。
この粘土版は人類が発明した書写材料の中でもっとも保存に優れているといわれる。湿っていてまだ柔らかい粘土版に葦の茎を押し付けて書いた楔形文字の文書は焼かなくても保存性が良く現在までに百万個以上の粘土が発掘されている。焼いた粘土版はさらに保存性が良くなる。
粘土版の書写材料としての欠点は粘土が湿っている間に書かねばならないこと、重く、かさ張ること、大きいものは作れないことなどである。シュメール人、アッシリア、バビロニアなど古代文明の様子が古代エジプト文明の状況以上に詳しく分かるのも粘土版の記録の保存性が優れているからである。