エジプトのパピルス

 紙以前の書写材料としてあまりにも有名であるこのパピルスが使われ始めたのは紀元前3000年代である。パピルスはパピルス草(和名カミカセツリ)から作る。パピルスは英語、ドイツ語、フランス語などヨーロッパの言葉で「ペーパー=PAPER」の語源にもなったが、正確には紙ではない。パピルスはパピルス草の髄の薄い切片を縦に並べ、その上に横に並べてナイル川の水をかけ、圧着し、乾燥させたものである。パピルス草の組織の切片そのものであり、紙のように植物繊維を取り出し、水に分散させて、すきあげたものではない。

 代エジプト、ギリシャ、ローマ帝国の時代にパピルスは軽くて扱いやすく、丈夫で、筆記しやすく、書写材料として優れていたので長い間、エジプトの政府の専売品で重要な輸出品でもあった。パピルスは政治の高度の文書から日常の用途に至るまであらゆる文書に広く用いられたが、かなり高価だったらしい。書き損じた時は濡れた海綿で容易に消すこともできる。欠点といえば折り曲げに弱いことである。数回折り曲げると切れるのでシートや巻き物の形で使われ、保存された。

 ーマ時代にエジプトから地中海諸国に多くのパピルスが輸出されて広く使われたが、現存するパピルス文書が少ないことは、パピルスの保存性があまり良くないことを示している。紀元前3千年前から紀元後10世紀頃まで約4千年間用いられた。