都市の妖怪
現代に生きる私達の中には、昔からの信仰が今でも少し心の奥底に残っていて、それが未だに妖怪がいると思わせたり、十字路や曲がり角などで何となく不思議な感情にさせたりするのだ、と宮田登さんという人が言っています。橋の上や十字路などで起こりやすい不思議な現象として、最近よく起こる恐ろしい事件、「通り魔事件」を例に挙げています。
「通り魔」は昔は「通り悪魔」といわれ、現代で言う「衝動殺人」の意味があったようです。突然気が狂ったようになって人を殺してしまう。これは気持ち次第で避ける事が出来るそうです。これが「通り悪魔」で、「通り悪魔」に遭ってその誘いに乗ってしまうとふらふらと人を殺してしまうのだといいます。
別に殺人を犯すだけが「通り悪魔」ではありません。江戸時代には女の人の髪の毛を切り取ってしまう「髪切り魔」という「通り悪魔」が現れたそうです。
この「髪きり魔」のように理由は分からないけれど突然切られてしまうというのは、客観的に見ると都市犯罪と呼ばれるもので、都市で生活する中で起こる犯罪なのだそうです。これは昔の事ではなく、現在でも起こる犯罪です。
もちろん、衝動犯罪だけでなく、計画犯罪も起こっています。その数は決して少なくありません。が、どちらにしろ、都市犯罪に異常犯罪が増えてきているのは間違いないでしょう。そしてこれは、現代の日本が、何処かで何かおかしくなってしまっているという証拠です。
ある日街を歩いていて、突然説明のつかない事件に巻き込まれる…というような事が「よくあること」になりつつあるのです。
妖怪は人の作ったものなのだから、人が集まる場所に妖怪がよく現れるというのも当然の事かもしれません。そして、私達は、現代では「ただのお話」としてしか扱われない妖怪達に復讐される事になります。私達は、自分でも気がつかないうちに、妖怪にとりつかれてしまう可能性があるのです。これは誰にでも当てはまる事であって、決して特別な人の事ではありません。そしてその誘いに乗ってしまった人は犯罪者になってしまう。これが現代の妖怪です。
もしかしたら、人間は皆誰でも心の中に妖怪を飼っているのかも知れません。
明日「通り悪魔」にとりつかれるのは自分かもしれないのです。
私達はそのことをいつも考えなければいけません。そして、たとえ「通り悪魔」が現れても、決してその誘いに乗らないようにしなければいけません。そうしないと、自分も妖怪の復讐を受けてしまうのです。