人を狩るもの
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人を狩るもの




イポテイン Ypotain

生息地:(バクトリイ)
種族:幻獣

 河馬。陸上、水中どちらにも棲み、その姿は半人半馬である。
 イポテインは人間しか食べない。人間を捕まえて食べる。
 これはバクトリイの伝承ではなく、中世フランスで語られていた存在である。


ウェンディゴ Wendigo

生息地:カナダ)
種族:妖怪

 人のような形の巨大な骸骨。
 吹雪の中に現れる。すさまじい速さで雪の中を移動し、それがあまりに速いので足が見えない。足跡だけがくっきりと雪の上に残っている。
 山奥の洞窟に棲んでいる、雪の中をさまよい続けているなど様々な説がある。
 人をさらい、雪の中に閉じこめ、好きなときにその体や魂を食べる。ウェンディゴの主食は人間である。
 カナダ人達はウェンディゴに襲われないよう、美しい女性を生け贄に捧げていた。


ヴォジャノーイ Vodianoi

生息地:スラヴ
種族:幻獣

 水底の光り輝く宮殿に棲む、人間よりひとまわり大きなカエルや魚に似たいきもの。
 水車を憎むためこれを壊そうとする。それを防ぐには生け贄を捧げなければならない。ヴォジャノーイは人間を食べる、あるいは奴隷にする。が、人間が手に入らないときは大型動物で我慢する。長いこと手に入らない場合は、他の水地に移動してしまうという。
 彼らは夕方から夜にかけて活動する。長いこと水につからずにいることができないので、すみかに近寄らなければ襲われることはない。
 また、ヴォジャノーイは月の満ち欠けとともに生まれ、死ぬ。すなわち新月の夜に生まれ、満月の夜に最も太り、欠けるにしたがい老衰していく。


毛むくじゃら獣 La velue

生息地:フランス・ユイヌ川流域
種族:幻獣

 中世、ユイヌ川にあらわれた。雄牛ほどの大きさで、頭は蛇。体が丸く、その体は全身長い緑色の毛に覆われ、さらに毛皮は針に覆われていた。この針に刺されると人間は即死する。頭は蛇で、幅広い蹄と大蛇のような尾を持っていた。
 毛むくじゃら獣は火を吐くことができた。また、追われると川に飛び込んで洪水を起こした。
 また、無垢な生き物が大好物で、子供や乙女を食べてしまった。
 あるとき恋人を食われた青年がこの獣をおいかけ、急所である尾をまっぷたつにして殺すことに成功した。毛むくじゃら獣の死体はミイラにされ、人々はその死を祝った。


瞰精鬼

生息地:インド
種族:霊

 タンセイキと読む。
 インドのピシャーチャの内、生きている人間を食うもの。
 人間や家畜の血や精気を吸い取ったり、生身の人間を食べる。
 詳しくはピシャーチャの項を参照のこと。


ハイドビハインド hide-behind

生息地:アメリカ
種族:?

 いつもなにかの背後に身を隠している。人と遭遇したときもそうするので、その人がどんなにこのいきものの姿を見ようとしてもそれはかなわない。だから、どんな姿をしているのか誰も分からない。
 数多くの木こりを殺して食ったと信じられている。
 ──が、これは木こり達のつくり話やほら話で、伝承ではなくつくられた話である。


バロン Balong

生息地:バリ島
種族:聖獣

 基本的には獅子舞の獅子に似たいきもので、体毛は白くて長く、黄金色のたてがみを持つ。顔は真っ赤で、上あごから大きな2本の牙が生えている。が、いくつかの種類がおり、それによって姿形が異なるという説もある。
 以下は、各種類の特殊な点を列記する。
  バロン・アス……犬の姿をしている。
  バロン・バンカル……イノシシ。体毛は黒・白・黄・赤。
  バロン・マチャン……虎の姿をしている。
  バロン・ケケット……上記全ての特徴を兼ねそろえた、代表的なバロン。
 人を襲って食う猛獣だったが、供物を捧げてからは人間を守護するようになった。
 あごのたてがみを水に浸すことで聖水がつくれる。これは魔女を退治する効果をもつ。


ブータ Bhuta

生息地:インド
種族:霊

 人が死ぬと、その霊魂は体を離れて浮遊する。この霊魂をプレータ Pretaといい、死後11日目に跡取り息子によって供養されれば、その霊魂は祖霊(ピトリ Pitr)となって家を守護するが、もしもそうでない場合には、ブータとなって人を食うようになる。
 ブータは傲慢で、人の話にまったく耳を傾けない。人間を騙してはその肉を食う。


ブラック・アニス Black-Annis

生息地:イギリス
種族:妖精

 イギリスにすむハッグの一種。
 ハッグとは、老婆の姿をした妖精で、野山に棲み醜い姿をしている。その姿形や行動は、いわゆる「魔女」のそれとほぼ同一であり(ハッグは魔女 Witchのモデルである)、すなわち鉤鼻に長い爪、鋭い目をしており、杖を使い大釜で薬をつくり、時には捕まえた人間を料理する。
 ブラック・アニスはスコットランドの高地の洞窟に棲む。顔は真っ青で、鉄の爪と白い牙を持ち、人を襲って食べる。人間以外に動物も食べることがある。また、大変に足が速い。
 彼女は家々の窓からすっと手を入れ、子供をひっつかむとさらっていってしまう。また、木の上で待ち伏せして人を襲う。ブラック・アニスが爪を研ぐ音が聞こえてきたら、子供を家に入れて窓を閉めなければならない。
 ブラック・アニスに襲われたらまず助からないが、怪我をさせることができれば、彼女はすぐさま手当をしにすみかの洞窟へ帰っていく。


マルティコラス Marthicoras

生息地:エチオピア
種族:幻獣

 三列の櫛のようにかみ合った歯と、人間の顔と耳と群青色の眼、獅子の体に血の色の毛並、それに蠍の尾を持っている。尾の針は飛ばすことができ、また毒がある。笛とらっぱを合わせたような声をして、とてもすばしっこい。
 人間の肉が大好きで、捕らえて食う。
 『聖アントワーヌの誘惑』において、自ら「軍隊が砂漠に入り込めば、それを食い尽くす」と語っている。


ミノタウロス Minotauros

生息地:ギリシア地方・ミノス島
種族:半人半獣

 ミノタウロスの伝説は非常に有名だ。
 昔、ミノス島に存在する、非常に複雑なつくりを持った宮殿(迷宮、すなわち「ラビリンス」の語源にもなった)に、雄牛の頭と人間の体を持った化物が棲んでいた。名をミノタウロスといい、人を食べるため、アテナイのまちから毎年男女7人ずつの若者が生け贄に捧げられていた。ある年の贄に選ばれたテセウスという若者は、王の娘アリアドネの助けを借り、見事ミノタウロスを殺した後、迷宮から脱出した──
 ミノタウロスは、ミノス島にあったクレタ王国の女王パーシパエーの息子である。パーシパエーはポセイドンが送った白い雄牛に対して異常な欲求を抱き、その結果ミノタウロスが産まれた。ミノス島の複雑怪奇な宮殿は、ミノタウロスを隠しておくため女王が建てたものだとされる。


ラミアー Lamia

生息地:(アフリカ)
種族:幻獣

 上半身は美しい女、下半身は蛇。彼女が吹く口笛の音色は大変美しく、その音で砂漠の旅人を騙して食ってしまう。
 ゼウスの数多い愛人のひとりの子孫である。
 ギリシアの伝承。



 
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