インドの社会の中に根付くカースト制度


 家系・血族を意味するポルトガル語のcasta(「血統」「階級」)に由来するインド特有の身分制度。ヴァルナ(色)とジャーティ(出身)により構成される。現在のインド憲法(1950年制定)ではカーストによる差別が禁じられているが、社会生活の中ではいまだに解消されていない。とくに不可触民(インドの法律用語では「指定カースト」)に対する差別はきびしく、不可触民は社会的・経済的に不利な状況におかれている。(マハトマ・ガンジーは不可触民をハリジャン「神の子」と呼びその向上に腐心した)その人口はインドの総人口8.5億人のうち15%を占め(1991年)、無視できない数である。しかし、カースト制度は言語、民族などあらゆる面で複雑なインドを1つの国にまとめている要因ともなっている。


紀元前1000年ごろアーリヤ人がガンジス川に移動し、農耕生活を始めて都市国家を形成した時、農業生産が高まると職業の分化とともに社会の階層分化がすすみ、4階層からなるヴァルナ(種姓)制度(のちのカースト)が成立した。各ヴァルナは時代と共に細分化し、職業と結びついたジャーティから構成されている。ジャーティの数は現在4000とも5000ともいわれる。男女共他のジャーティとの結婚の禁止(ジャーティ内婚制)、他のジャーティとの食物の授受、共食や共飲の制限などの特性をもつ集団であり、現実の生活の中で重要な意味を持っている。