テラフォーミング

テラフォーミングの考え方

太陽系の中にある、数多くの惑星や大きな衛星を改造し、その星自体を生命が住める環境にしよう、というのが、「テラフォーミング」の発想のはじまりです。一見、不可能に見えますが、太陽エネルギーをうまく利用すれば、工学的には、可能であると考えられています。

例えば、テラフォーミングの有力候補である火星と金星についてみてみると、火星は、温度差が激しく常に凍っているため、そして金星は、高温高圧の灼熱地獄になっているため、生命が住むことはできません。しかし、これはどちらも太陽との位置関係に原因しているものであり、暑いなら太陽エネルギーをさえぎり、冷たいならそれが増えるようにすればよいのです。

テラフォーミングのはじまり

テラフォーミングがはじめて研究対象として扱われたのは、1961年に、アメリカのカリフォルニア大学の惑星物理学者カール・セーガンが、金星の環境改造に関する論文を発表したときでした。これを境に、世界中の科学者たちが、惑星の環境改造に真剣に乗り出し始めました。

テラフォーミングの有力候補

1965年にアメリカが打ち上げた火星探査体マリナー4号が火星の写真を地球に送ってから、打ち上げられたいくつもの無人探査機が、火星の素顔が明らかになるにつれ、火星が地球に似た環境を持ち合わせていることがわかってきました。それいらい、火星のテラフォーミングの研究が、盛んになりました。
火星については、「宇宙人はいるのか?」を参照。

火星のテラフォーミングの具体的な方法

火星に生命が住めるようにするには、まず地表に吸収される太陽エネルギーの量をふやして、火星の気温をあげなければなりません。

1.巨大鏡を利用した方法
アルミホイルよりも薄い巨大な鏡を火星近くの宇宙空間に設置し、太陽の光を集めて火星の極冠(火星の南北両極にみえる氷でできた白いまだら模様の部分)の氷を溶かします。極冠を溶かすことができれば、大気中に水蒸気と二酸化炭素が発生し、その二酸化炭素が温室効果が働くようになり、火星の気温があがるのです。

2.炭素質物質を利用した方法
太陽光を吸収しやすい暗黒色の炭素質物質を粉にして火星表面に撒き散らし、太陽光の吸収率をあげるというものです。

そして次には、もちろん必要不可欠なのが酸素です。この酸素を増やすためには、次のような方法が考えられています。

1.藻類を利用した方法
ある程度火星の大気が暖かくなり、液状態の水も維持できるようになったときに、遺伝子工学的研究を重ねて火星で育つように品種改良された藻類を火星に持ち込むというものです。そうすることによって、火星の大気に酸素をもたらすことができるかもしれないというわけです。

2.生命体繁殖を利用した方法
火星の地下にある氷を溶かして、塩分調整のために大量の塩を持ち込んで海を作りそのなかに、酸素や日光を必要としない生命体をはなして繁殖させます。生命体の中には、酸素を作り出せるものを入れておきます。すると、地球誕生の時のように、酸素が充分海に溶けて、飽和状態になると、やがて、酸素が海からあふれて、大気へと流出しだします。その酸素が紫外線に当たって化学反応を起こし、やがてオゾン層をつくりだし、温室効果にもつながるというわけなのです。

金星のテラフォーミング

火星以外にテラフォーミングが考えられているのは、金星です。しかし、火星の地表は摂氏400℃に達する高温であり、テラフォーミングを行うためには、太陽のエネルギーをさえぎる、大量の二酸化炭素の除去、時点の加速、水の確保などがあげられ、火星と比べてはるかに難しい事業になってしまいます。そのため、金星のテラフォーミングの注目度は低くなっています。