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遺伝子のスイッチ〜細胞の分化と老い
細胞は、その働きによって様々な形や性質を持ったものに分かれます。神経細胞、骨髄細胞、免疫細胞等、
列挙すればきりが無いほどたくさんの種類の細胞があります。
しかし、先に述べたように、個体を構成するすべての細胞のそれぞれにその個体のすべての遺伝情報がしまい込まれています。
では、どうやって細胞の性質が正確な位置で適切な働きに分かれる(分化する)のでしょうか。
どんな動物も、植物も、最初は受精卵という一つの細胞から始まります。
受精卵は、2個、4個と分裂を繰り返し、やがて胚となります。
胚の細胞は胎内で成長する間、絶えずいろいろな部分を移動しています。しかし、ある時期が来ると、脚、腕、というように基礎となる大まかな部分が決定され始め、それは徐々に足首、もも、ふくらはぎ、足首、親指、二の腕、ひじ、手首、というように具体的に絞り込まれていそして、そのときに細胞が居た場所によって、さまざまな働きのものへと変化していきます。
その過程で、それぞれの細胞の中で起きているのは、使わない遺伝子にロックをかける作業です。細胞は、その性質を測定の場所の特定の働きに特化させるために、隣同士の細胞から得た自分の位置の情報を元に、使わない遺伝子を封じるているのです。
遺伝子を封じる仕組みがあるのに対し、逆にロックのかかった遺伝子を発現させる仕組みもあります。
アポトーシスと呼ばれる遺伝子があります。これは、言うなれば細胞の自殺プログラムです。
通常、この遺伝子にはたんぱく質でロックがかかっていて、そこには、細胞を分解するための酵素のアミノ酸配置が書かれています。
この遺伝子を封じているたんぱく質は、ちょうど鍵穴のようになっていて、あるたんぱく質が結合すると遺伝子の封印をとくようになっています。そして、ある場所でまず封印をとく鍵に当たるたんぱく質を合成する遺伝子が発現し、たんぱく質が合成されます。
そして、遺伝子に到達すると、たんぱく質に遺伝子を開放させ、細胞分解酵素が合成され、その細胞は分解されます。
このような遺伝子をマスターキー遺伝子と言い、老化に関係があるのではないかとも言われています。しかし、その遺伝子の所在はまだ分かっていません。
又、老いに関係する遺伝子には、テロメアと言う、DNA分子の先端に位置する遺伝子があります。
この遺伝子は、遺伝子の複製のたびに短くなっていき、最終的にすべてなくなると、複製ができなくなるのです。
このため、この遺伝子が生物の寿命を決めているものと見られています。
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