細胞分裂とDNAの複製 

 生物の細胞は絶えず分裂を続けては死んでいきます。 その分裂の際、遺伝子(ここでは染色体)も同時に複製されますが、細胞分裂には有糸分裂(体細胞分裂)というものと、 減数分裂というものの2つがあります。 両者の大きな違いは、作り出す細胞の種類です。 前者は体細胞という、生物の身体を構成する細胞の分裂で、同じ染色体を持った細胞を単純に増やしていくもの。 後者は精子や卵子のような生殖細胞で起こる、分裂のたびに染色体の数が減る分裂です。 有糸分裂の場合、体細胞は常にひとつの生き物を構成していくので、細胞を分裂させてその機構を維持するためには、遺伝子を均等に分配し、同じ細胞ができなければなりません。このため、有糸分裂は、オリジナルを等身大でコピーし、まったく同じものを作る、単純な作業が行われます。
一方、減数分裂の場合、生殖細胞という、子孫の元になる細胞は、新しい個体を作り出す際に、その個体に多様性を与え、少しでも生き残る確立を高める必要があります。このため、オリジナルとは少し違った遺伝子を持ったものが作られるます。
まず有糸分裂を見ていきます。 細胞には1日24時間の生活サイクルがあり、 染色体の複製の準備を行うG1期、染色体の複製を行うS期、 細胞分裂の準備を行うG2期、そして細胞分裂を行うM期の 4つに分かれています。 有糸分裂の場合は、G1、S期で染色体全てが2倍の量に複製されます。 このときは、まだ染色体が定まった形をしていないため、見ることができませんが、やがて46の塊に分かれて 固まってきます。この時細胞では、核が分解されて消滅します。
そしてG2期に染色体が縦に並び、分裂に備えます。 また、この時、中心体と呼ばれる器官2つが染色体の両側から紡錘糸を出し、染色体の動原体という部分(ヒト染色体の場合はくびれの部分)に紡錘糸の先端を結合させて紡錘体と呼ばれる構造をつくります。
最終的に、M期で縦に並んだ染色体が紡錘糸に引かれるようにして左右に引かれて分離し、核が復活します。
そして、細胞質が分離し、細胞分裂を完了します。 次に減数分裂です。 生殖細胞も同じ細胞なので生活サイクルや分裂の過程は一緒ですが、有糸分裂のときとは少し様子が違ってきます。
まず、染色体の複製作業までは有糸分裂のときと同じ要領でおこなわれます。 しかし、この後染色体が固まると、相同染色体同志の間で遺伝情報の乗換えという作業が行われます。 これによって母体との情報が異なる染色体ができ、多様性が生まれるので 生き残るチャンスを少しでも得ることができるのです。 次に、染色体が分離し、同時に細胞も分離し、46の染色体をもった2つの細胞ができます。 そして、それぞれが2度目の分裂を行い、23の染色体を持った4つの細胞が出来上がります。 この時、染色体は相同染色体同士が分かれるため、父親由来の染色体を元にしたものと、母親由来の染色体を元にしたもの(このような書き方をしたのは、1回目の分裂の際に遺伝子の入れ替えが起こり、すでに別の遺伝子となっているためです。)にきれいに分かれていきます。




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