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哲学のすゝめ 近年、科学は日々目まぐるしく進歩していくのに対し、哲学は不振であるといわれます。そこで、ここでは、現代人が失いつつあるといわれる「考える力」の重要性について説いていきたいと思います。 皆さんは、「ソフィーの世界」という本を知っていらっしゃるでしょうか。 ヨースタインゴルデル著の本なのですが、単なる小難しい哲学書ではなく、物語として見ても十二分に楽しめる本です。この物語の最初に、謎の手紙の差出人は「人々は今の世界を当たり前のものと思ってしまっている」という話が出てきます。更にその謎の手紙は続けます、「哲学者に必要なのは驚くという才能だ」。ここで「なるほど」と思った人、いますか?あなたには哲学者の才能がありますよ。 要するに、現代人はあまりに多くの事を知りすぎているのです。哲学の第一歩は「問いを立てること」だと言われますが、人々は哲学の問いに科学で答えてしまいます。世界は何からできているかと問えば「原子」と答え、人間は何処からきたのかと問えば「全ての生物は海から上がってきたのだ」と答え、心とはどこにあるのかと問えば「脳」と答える。 確かに、科学の世界ではそれが正解です。事実、哲学の多くの問いは科学が解いてきました。しかし、哲学の世界の正解と科学の世界の正解は、必ずしも同じではありません。 とはいえ、我々現代人は、どうしても科学で証明された答えのみが真実であると思いがちです。そうして、科学で答えが出てしまったことは、人々の中で「当たり前」のこととされてしまい、人々はそれ以上そのことについて考えなくなってしまうのです。 しかし、ここで考えてみてください。私達はいろいろな問いに対する答えを「知って」はいるのですが、「解って」はいないのではないでしょうか。 全てを構成しているものは原子である。これは科学で習ったことがある人なら誰でも答えられます。でも、それでは、その原子は何によって出来ているのでしょう? 世界に最初に表れたのは単細胞生物であると人々は知っています。では、その単細胞生物は、最初の生命は、一体何時どのようにして何も無かった地球に出現したのでしょう? このような問いを、私達は「当たり前」のことだから、と無意識のうちに黙殺してしまっているのではないでしょうか。 「ソフィーの世界」の、謎の手紙の差出人曰く、「世界という兎のふかふかの毛にもぐりこんでぬくぬくと暮らしている蚤」というわけです。 さあ、みなさん、私達と一緒に世界という兎の毛の奥深いところから抜け出し、毛の先のほうに戻ってきて、世界をもう一度新しいものとして見つめなおしてみましょう。 そのときからあなたは「哲学者の卵」です。 |
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