一寸法師研究2


私達が研究する一寸法師が何で、どんなものか、簡単に理解できたでしょうか。
ではもう少し詳しい研究をしていきたいと思います。


◎御伽草紙?

研究1の方でも少し触れましたが、一寸法師ほか、ものぐさ太郎、浦島太郎などの昔話が収められている御伽草紙とは、いったいどんな物なのでしょうか。
初めて御伽草紙と呼ばれる読み物が成立したのは、南北朝、つまり室町時代から江戸時代初期の間のことです。広い階層に受け入れられた短編の物語郡を総称してこう呼び、その物語の多くは作者不明となっています。

が、一口に御伽草紙と呼んでも、実は御伽草紙と呼ばれている読み物は実は二つあって、ひとつは前述した江戸時代初期までの古い御伽草紙、この御伽草紙は「室町時代小説」、「中世小説」等とも呼ばれ、収録されていた物語はその数300〜500編に達したようです。大衆向けにかかれていて、簡単な文章でつづられているそうで、その中には豪華な色彩画が書いてあるものも有り、いずれの作品も作者、成立時期についてはよくわかっていません。

また、もう一つの御伽草紙と言うのは江戸時代の中期に渋川清右衛門という人が数ある御伽草紙の物語の中から23編を選び、『御伽草紙』として刊行した物です。
渋川版『御伽草紙』と呼ばれるそうですが、この中には『文正草子』、『鉢かづき』、『小町草子』、『御曹司島渡』、『唐糸草子』、『木幡狐』、『七草草子』、『猿源氏草子』、『物くさ太郎』、『さざれ石』、『蛤の草子』、『小敦盛』、『二十四子孝』、『梵天国』、『のせ猿草子』、『猫の草子』、『浜出草子』、『和泉式部』、『一寸法師』、『さいき』、『浦島太郎』、『横笛草子』、『酒呑童子』が収録されています。一寸法師も入っていますね。

この中のいくつかについて少し紹介をしておきます。

『物くさ太郎』>>>
「お高の本地」とも呼ばれている。「隣の寝太郎」など寝太郎型の昔話と同じ系統。怠け者で貧しい男が知恵を用い長者になるという昔話。しかしこの『物くさ太郎』では、農村だけの成功でなく後に都へ行って重役になり、結婚し、貴族の世界に入り、帰国後120歳まで生きておたかの明神としてまつられる、という壮大な話となっている。
農村では「ものくさ」、都へ行くと「まめ」という行動の変化により農村と都の違いを表していて、また中には笑いを誘う工夫が随所に見られるため、笑話として作られたとも言われている。

『浦島太郎』>>>
助けた亀に連れられ竜宮上を訪ねるが、3日過ごして地上へ戻るとそこでは300年の時が過ぎてしまっていて、開けてはいけなかった玉手箱を開けると浦島太郎は一瞬のうちに白髪のおじいさんになり死んでしまうという内容。動物報恩や約束違反などをモチーフにしている。日本各地に似たような話が伝えられており、その内容も様々で、京都府与謝郡の浦島神社、神奈川県横浜市の浦島の足洗い井戸、腰掛石などがある。昔話としての浦島太郎は全国に分布していて、やはり内容は動物報恩をモチーフにしている。

◎一寸法師についてもっと詳しく!

皆さんもご存知だと思いますが、一寸法師と言うのは異常に小さな姿で世に生まれた主人公の活躍を語る、いわゆる昔話です。
御伽草紙に納められていた物語が『一寸法師』の名だったためにこれに似たような昔話を一寸法師と呼ぶ呼び方が定着しました。しかし日本各地に散らばる民間伝承では、この種の物語の主人公を一寸法師と呼ぶほか、豆助や豆一、五分次郎、親指太郎などとも呼んでいるそうです。

また、一寸法師のような存在は神話や伝説にも登場し、その背丈の低い神や人物は小さ子と総称され、この種の昔話の内容は、やはり子の無い夫婦が神仏に祈り男の子を授かりますが、豆粒のような小さな子でそれ以上に成長せず、その後長者や貴族の家に行って働き、計略を成功させ美しい嫁と結婚し、さらに鬼退治をして出世。また鬼の宝だった打出の小槌で一人前の男になる。というものです。

内容は各地によって様々で、鬼退治をしないものや、打出の小槌によってではなく風呂に入ることで一人前になると言うものもあり、さらには背丈はそのままで幸せになる、と言うものもあるそうです。話の特徴としては、異常誕生児であること、これは脛(すね)や指から生まれる、というものまであるそうです。またそのしるしとしての背丈の低さ、また、身分の高い人の娘を妻とするところなども挙げられます。そして最後には、打出の小槌などの道具で一人前になる。ということです。

こういった話には、神の申し子としての小さ子に対する信仰や、男が一人前になること、つまり出世願望や英雄は異常な誕生の仕方をする、といったことなどを反映しているとされているみたいです。他にも、一寸法師という『人間』の主人公でなく、小さく無力な動物、つまりタニシやカタツムリ、カエルなどが主人公となっている昔話もあるそうなので、これらの昔話と一寸法師には何らかのかかわりがありそうです。

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