「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」 「うん。僕だってそうだ。」カムパネルラの眼にはきれいな涙がうかんでいました。「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう。」ジョバンニが云いました。「僕わからない。」カムパネルラがぼんやり云いました。 「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」 ジョバンニが斯う云いながらふりかえって見ましたら |
そのいままでカムパネルラの座っていた席に もうカムパネルラの形は見えず ただ黒いびろうどばかりひかっていました。 |