白い岩になった処の入口に、〔プリオシン海岸〕という、瀬戸物のつるつるした標札が立っていた。 一人のせいの高い、ひどい近眼鏡をかけ、長靴をはいた学者らしい人が、手帳に何かせわしそうに書きつけながら、鶴嘴をふりあげたり、スコープをつかったりしている、三人の助手らしい人たちに夢中でいろいろ指図をしていました。 |
「くるみが沢山あったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみだよ。ここは百二十万年前、第三紀のあとのころは海岸でね、この下からは貝がらも出る。」
「証明するに要るんだ。ぼくらからみると、ここは厚い立派な地層で、百二十万年ぐらい前にできたという証拠もいろいろあがるけれども、ぼくらとちがったやつからみてもやっぱりこんな地層に見えるかどうか、あるいは風か水やがらんとした空かに見えやしないかということなのだ。わかったかい。」 |