「もうじきサウザンクロスです。おりる支度をして下さい。」 「あたしたちもうここで降りなけぁいけないのよ。ここ天上へ行くとこなんだから。」 見えない天の川のずうっと川下に青や橙やもうあらゆる光でちりばめられた十字架がまるで一本の木という風に川の中から立ってかがやきその上には青じろい雲がまるい環になって後光のようにかかっているのでした。 「さあ、下りるんですよ。」青年は男の子の手をひきだんだん向うの出口の方へ歩き出しました。 「じゃさよなら。」女の子がふりかえって二人に云いました。 「さよなら。」ジョバンニはまるで泣き出したいのをこらえて怒ったようにぶっきり棒に云いました。 |