紫色の閃光が目を射り、何か事故が・・・と思う瞬間、意識を失った。
気がついた時には、座っていた位置より2m飛ばされていた。
壕の外に出ると一瞬呆然となった。 今まであった建物がない。
壕の上にかけ上がった。 広島の街は・・・。
下の方で兵隊さんが 「新型爆弾にやられたぞ。」 とどなっている。
地下壕の部屋にかけ込んだ。
通話の出来る所へ早く連絡を、そう思いながら電話機を持った。
九州と連絡がとれた。 そして福山の司令部へ。
「もしもし、大変です。広島が新型爆弾にやられました。」
「なに!! 新型爆弾? 師団の中だけですか。」
「いいえ、広島が全滅に近い状態です!!」
「それは本当か!!」
大きく割れるように響く声。 その内に火の手が上がったのであろうか。
壕の上の草がパチパチ燃える音が耳に入った。
「もしもし、火の手がまわり出しました。私はここを出ます。」
「どうかがんばって下さいよ。」 と兵隊さんの声を後に受話機を置く。
再び外に出ると、炊事場のあたりではもう火がまわっていた。
その音にまじり建物の底から女の人の助けを求める声が耳に入った。
(体験記「炎のなかに」より)

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