バ ー ル ベ ッ ク    

三 神 崇 拝 の 舞 台 と な っ た  ロ ー マ の 信 仰 の 中 心 地

西と東を山脈に囲まれた、標高1200メートルのベカー高原の中心に、バールベックは位置する。

バールベックというのは、豊穣の神バールと、平原を意味するアラビア語のベカからなった。その名のとおり、フェニキア時代から肥えた土壌に恵まれ、フェニキア人達の神への崇拝は、農耕と深く結びついている。

紀元前64年、ローマ帝王がバールベックに進行した。その後カサエルがローマ人の入植、同時に巨大な神殿の建設に着手し始めた。その時代、海にも近かったこの場所は、ローマ帝国にとって大変重要な地点であった。その後、ローマの宗教に対する思考から、さまざまな神殿が建てられることとなる。
しかし、その後聖地としてあがめられながらも、313年、コンスタンティヌス1世によるミラノ勅令により、キリスト教がローマで公認の宗教となり、その後国教としてあがめられてしまうと、次々と立てられたさまざまな異教徒の神殿が破壊されていった。バールベックの街でも異教は禁止とされ、徐々にバールベックはその役割を失っていく。ローマの象徴のユピテル神殿も、オスマントルコ時代には廃墟と化してしまった。

ユピテル神殿は、アウグストゥス帝が設計したものであり、横90メートル、縦54メートルの最高位のローマの神殿である。
コリント式の柱は高さ20メートルを超え、昔は54本あったその柱は、今では6本しか残っていない。

もともとローマというのは、個々の宗教心を排除せず、穏やかに習合する。そのため、バールベックはフェニキア神とユピテル神とを習合させたものである。バールベックにはユピテル神殿の他にバッカス神殿、ヴィーナス神殿(ウェヌス)があり、バッカス神殿はローマ神殿の中で最も保存状態がよい。また、ヴィーナス神殿も、名のとおり愛と美の女神ヴィーナスに捧げられた神殿である。

1984年に登録された。

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