| 川端康成の業績 |
| 「伊豆の踊り子」;伊豆旅行の叙情の中で人の心のふれあいを書いた青春文学の名作。 |
| 概略;自らを孤児根性で歪んだ人間だと反省を重ね、その憂鬱に耐え切れず伊豆の旅に出てきた20歳の「私」が天城峠を超えたところで旅芸人一行と道ずれになった所から物語は始まる。「私」はその中の一人の踊り子にひかれていたが、湯ヶ野での宿泊の翌朝、白い裸身をいっぱいに伸ばして朝日の仲での踊り子の十四歳の姿に心ぬぐわれたような気分を覚える。また、下田への道中での「いい人はいいね」と語る彼女らの言葉を聞き、晴れ晴れとして明るい山々を見上げた。そして彼女たちと別れた後、素直に人の親切を受け入れられる心になった「私」は東京行きの船で、涙を流して泣いていた。 |
| 「雪国」:「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」の書き出しは有名。 |
|
|
|
「雪国の一節」 |
| 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。 向こう側の座席から娘が立つて来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れ込んだ。娘は窓いつぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶやうに,「駅長さあん、駅長さあん。」 明かりを下げてゆつくり雪を踏んできた男は、襟巻きで鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れてゐた。・・・ |
| 「禽獣」;主人公が育てる禽獣と人間についての思いを交錯させながら、人間の情を凝視した作品。 |
| 概略;嫌人癖のある「私」は、かつて心中を図り、相手の女の無心な合掌の姿に打たれ、虚無のありがたさを感じたことがあった。その女は今は無残に堕落してしまい。「私」はわざと奇形的に動物を育てようになる。 |
| 千羽鶴;日本の美の継承を望んで書いた、幽玄的作品。 |
| 概略;亡父の愛人「栗本ちか子」の茶会に招かれた「菊治」は、同じく父の愛人「太田婦人」とその娘「文子」に再会する。彼とその周りの女性たちが、幽趣沈静な雰囲気で話を展開させていく。そして、ちか子は中年の妄執を見せ、太田婦人は自殺し、文子は純潔に姿を隠す。 |
| ・川端氏名言集・ |
| 「自分はこれから日本の悲しみの中に帰ってゆくだけだ」 敗戦後の日本文壇のアメリカ礼賛一辺倒の中にあっての言葉 「畳の上で死ぬようなのは文学者の死に方ではない」 谷崎潤一郎の死に当たって |
川端康成著「雪国」より