大江健三郎の業績
「人生の親戚」
概略;障害のある長男、光をもった作家Kは、ある日メキシコで農場経営をしていたセルジオ・松野氏から「倉木まり恵」という女性の生涯を映画にする物語を書くように依頼された。彼女の息子「ムーサン」は光と同じ養護学校にいた。二人はクラシック好きも手伝って、友達になった。しかし、まり恵のもう一人の息子「道夫」は、生涯車椅子の生活で人から差別的な目で見られていた。道夫はムーサンに来世での愉快な暮らしを語って自殺する。まり恵はその後次々災難が降りかかり、最後にはメキシコの農園で聖女のように崇められながらガンで死ぬ。Kは彼女を、生きてゆく上で苦難をともにする「人生の親戚」と感じ、深い悲しみに包まれた。
「同時代ゲーム」
概略;昔、四国の山中に独立国「隠れ里」を創建した人たちにとって、その村は国家であり、小宇宙でもある。村を愛する人々は、自衛のため大日本帝国との全面戦争に入る。琉球が日本に飲み込まれた沖縄問題も重ね合わせて書いた、全体性回復がテーマの小説。
「死者の奢り」
概略;大学仏文科の学生である「僕」は、女子大生とともにアルコール槽の死体を移し変えるアルバイトをする。人というより物に近い死体を移し終えたとき、その仕事が徒労であったことを知らされる。現代人の「不安」がテーマの実存主義的小説。
「芽むしり仔撃ち」
概略;山村で集団生活する感化院の少年たちは、奇妙な、だが団結した共同体を作るが、疫病や、事件、村人の帰還により共同体が分解する。現代の閉鎖的状況を生きる人間の虚無感を書いたこの作品などの初期作品は、戦後世代に大いに支持されるようになる。
「万延元年のフットボール」
概略;翻訳者で27歳の青年「蜜三郎」は、四国の山村へと帰った。しかし、そこには弟の「鷹四」との対立、暴動、自殺、異常児誕生などの出来事が待っていた。現代人の「奇形」さがテーマの小説。
.・大江氏の謙虚な名言・

「若くて生き延びた自分に賞がまわってきた」
ノーベル賞受賞に際して

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