野依良治氏の研究
1.最初に
野依氏は不可能といわれた分子の左右の作り分けに成功しました。それは一体どういうことなのか順を追って書いていきましょう。
まず、野依氏の研究でノーベル賞の対象となったのは「不斉水素化」という研究だった、という前提で下の説明をご覧ください。

2..左右作り分が必要な理由説明

分子という極小の世界にも左右が存在し、その左右で同じ分子でも毒を持ったり、薬になったりする、ということを皆さんはご存知でしょうか?これを左手側、右手側の分子と呼んでいます。ひとつ例を挙げるとサリドマイドという薬があります。1960年代これを飲んだ妊婦の胎児が奇形で生まれる、という問題が発生し有名になった薬です。しかし、胎児を奇形にする性質があるのは左手側のサリドマイド分子で右手側の分子は、主に沈静や催眠効果を持つのです。
3.野依氏の研究について
さて、ここで野依氏の研究がでてきます。最初に書いた通り、野依氏の研究はこの左右の作りわけの一部に成功したのです。この研究のすごさがお分かりいただけるでしょうか?では、ここで本題のどうやって左右に作りわけをしたか。と言う点に入りましょう。
不斉合成反応
分子の作用を作り分ける方法は何通りかあり、まとめて「不斉合成反応」といいます。分子には左右対称のものと左右の区別があるものが存在し、左右で区別があるものでも反応させて出来上がった物質の長さや重さ、エネルギー量は同じになります。
野依氏が分子の左右を作り分けたのは、反応物質に触媒をくっつけてどちらか一方の分子の精製を阻害する方法でした。
50:50の左右物質反応図 不斉合成反応図

そしてノーベル賞の対象になったのが水素をくっつける「不斉水素化」という研究だったのです。触媒というのはそれ自体は反応によって変化はしないが反応を促進する物質のことです。そして野依氏は1980年に「BINAP」という触媒を作ることに成功したのです。

さて、これが左右の作りわけを可能にした原理なわけです。この作業をナノメートルの単位でおこなっているのだから凄いの一言でしょう。
3.「BINAP」について
前述したとおり、BINAPとは触媒のことです。野依氏が作った「BINAP」は非常に美しい幾何学模様をしており野依氏は、機能は美であるといっています。
4.同時受賞者
最後に野依氏は3人共同で賞を受賞しています。アメリカのウィリアム・ノ−ルズ博士とバリー・シャープレス博士そして野依氏の3人です。
戻る