**蝶と蛾



 蝶と蛾、その区別とはどういうものか、詳しく考えたことがありますか?日本人であれば、少しとかからずに『蝶』はサナギから蝶になり、『蛾』はマユから蛾になるものだ、ということに気がつくはずです。それでなくても、形からして蝶と蛾は違うじゃないか、という人も居るでしょう。
 しかし実は、フランスやドイツではこの蝶と蛾をことばとして、つまり名前としてはあまり区別していないのです。フランスで蝶はパピヨンといいますが、フランスの百科事典などでは蛾もパピヨン、つまり蝶の一種としていっしょくたに紹介されていたりするのです。
 辞典で『蛾』という言葉を引くと、フランス語で蛾は『パピヨン・ドゥ・ヌイ』、つまり『夜の蝶』という言葉で乗っています。つまり厳密に蛾をいいたい場合は『夜の』、という言葉をつけて区別するのですが、一般にフランスでは蝶も蛾も同じ種類の昆虫であり、『パピヨン』といえば蝶、蛾、どちらともを指すことができるというわけです。
 ドイツ語でも同様に、日本でいう蝶、『シュメッタリンク』で蛾のことも言い表すことが出来ます。こちらも厳密に蛾といいたい場合は『夜の』という意味をつけて『ナハツシュメッタリンク』というのです。
 もっと細かく見ていけば、蝶という言葉を何かもじって蛾としたこのような言葉以外に、ただ一語で『蛾』の意味を表せる言葉がフランス語にもドイツ語にも見られるのですが、この2つの言語では一般的には蝶と蛾を区別しないで認識しているのは明らかです。
 ちなみに英語の場合を見てみると、蝶は『バタフライ』、蛾は『モス』と、日本と同様に両者を名前からして区別しています。そのためにフランス語でもドイツ語でもそうなのだろうと思ってしまう人も少なく無さそうですね。
 外国語、はたまた外国文化を真に理解するには、このような細かい部分にも気をつけなければいつどんなつまづきに遭遇してしまうか分かりません。本を読むにも意味が通らなくなってしまう可能性もあるのです。

まわたり