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**アリとキリギリス 『アリとキリギリス』という有名なイソップ物語の童話を知らない人は少ないでしょう。これは原典、つまりおおもとのお話というのはギリシャのものなのですが、日本のアリとキリギリス、結末はどんなものであったか覚えておいででしょうか。 日本のアリとキリギリスは、夏に遊んでばかりいたために冬になって食料に困り、アリの所に助けを求めたキリギリスが、夏の間働いて食料を蓄え、冬を過ごそうとしていたアリ達に、温かく受け入れられるというものでした。 このお話の教訓というと、「情けは人のためならず」という辺りでしょうか。しかし、先ほど書きましたギリシャ語の原典や大抵のヨーロッパの国々のアリとキリギリスは、こんな温かな結末ではなく、アリは助けを求めに来たキリギリスを遊んでいたから悪いんだと笑って突き放し、食べ物など与えても上げないのです。 実は、アリとキリギリスは、本当は「常に自分を助ける努力をせよ」という教訓を含んだ物語だったのです。イソップはそのような物語を作ったというのに、日本では「情けは人のためならず」という物語に変えられてしまっているのです。 ちなみに、1593年に刊行された外国人宣教師の日本語訓練用のためのイソップ物語という全てローマ字でつづられた日本語の本の中にあるアリとキリギリスの元になった『セミとアリ』という物語の結末は、アリがキリギリスを馬鹿にしてあざけった後、せめてもの情けとして少しの食べ物を与えたとなっています。 翻訳を依頼したであろう外国人宣教師は、この物語の教訓を変えずに、そのまま冷たい結末のままで終わりたかったでしょうが、きっと日本人がもっと日本人に受け入れられやすいようにと、結末に手を加えてしまったのでしょう。 こんな所にも見られる文化、精神の違い。興味深いお話であると思います。 (参考:テーマ別資料現代社会2002) まわたり
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