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2*言語学の歴史 ■ 一 ソシュール ソシュール 近代言語学の祖といわれるのが、ソシュールという学者です。このソシュールが言語学において果たした役割というのは、発想の転換というか、大発見とも言うべきもので、これまた、言語学が何かということと同じように、簡単には表現できないのですが、とにかく大きなものでした。 ソシュール自身、言語学という学問が持つ意味、その複雑さに、頭を悩ませていました。それは、ソシュールが近代言語学の祖とも言われている学者であるのに、彼自身では彼の言語理論について、なんの論文も、本も、書き残していないということからも伺えます。 ではどうしてソシュールという学者の名前がこうして偉大な学者の一人として残っているのかというと、実は彼の弟子であった人物二人が、ソシュールが大学で行っていた講義に出ていた学生達のノートを調べ、まとめ、彼の言語理論を「一般言語学講義」として本に編んだためです。1916年に世に出たこの「一般言語学講義」は以後の言語学の発展、歴史に大きな影響をもたらし、近代言語学を形作る一つの大きな理論としてソシュールの名を近代言語学の祖といわれるまでにしました。 しかしその影響が現れるのは、1950年代に入ってからでした。ソシュールの言語理論は人類学から記号論へとその影響圏を広げて行き、やがては人間の記号活動の全域にわたって議論されるようになりました。 ソシュールの言語理論についてこの「一般言語学講義」以外にも、彼の講義のメモなどを集めて編んだ物など、本として出版されました。 いずれにしても、人々はこの講義から近代言語学というものを形成してきたというわけです。 |