まとめ

 僕達のEthnic Music and People’s Lifeのサイトは、全部で6つのカテゴリに分かれていてそれぞれの音楽文化について説明をしています。一見歴史も文化も地理も何の関係もない地域を取り扱っているように見えますが、音楽という一つのファインダーを通してそれら全体を見渡すと、様々な共通点を発見することが出来ます。


 迫害の歴史から音楽が誕生することがあります。スペインのフラメンコはロム(ジプシー)と呼ばれる放浪民族が土着の民族に南へと追いやられ,迫害されて、その苦しさ、や悲しみの情熱を表現した物とされています。フラメンコという名前自体にも差別的な意味がふくまれているという説さえあるくらいです。また、アメリカ合衆国内で生み出されたブルースも、その生みの親である人種アフリカ系アメリカ人の祖先はは、過去にアメリカ人(アメリカへの移住者)の農業労働用の商品としてアフリカ大陸から1000万人あまり運び込まれてきました。彼らは奴隷として白人からは隔離され、迫害されつづけていましたが、その困難な状況の中でブルースという音楽は出来上がっていきました。そのため、ブルースにも生きる苦しみなどのハートウォーミングな内容の歌詞が多いのです。奴隷といえばブラジルのサンバ・ボサノバ発祥のケースも忘れてはいけません。彼らはポルトガル人によってアフリカから労働力として連れてこられ、そのまま一つの人種として南米にとどまらざるを得なくなったという過酷な経歴があるため、だからこそ逆にあれほど陽気な、しかし時には悲しみを表すことの出来る奥深い音楽文化が生まれたのです。
 
  太古から続く歴史の中で自然との共存を音楽として表現している文化もあります。ヨーロッパ人がこの大陸に着てからまだ200年しかたっていないのに比べ、アボリジニーは、アジア大陸にオーストラリア大陸がつながっている時からこの場所に存在しているため、「大地」や「自然」を中心とした神秘的な儀式としての音楽が発生したのです。また、このサイトでは触れなかったアイヌ民族(日本・北海道)の伝統音楽も、島国として孤立していた中で独自の音楽文化が「大自然」を中心にしている点で、オーストラリアのアボリジニー音楽と共通しています。アボリジニーはディジュリドゥーという重低音の管楽器、アイヌはムックリという中低音の弦楽器をメインに使用するところからも、似た文化や歴史的背景は音楽にも作用するということがうかがえます。


 沖縄音楽とアイリッシュミュージックも歴史的背景からみると実は似ているところが多いのです。沖縄文化はもともと日本の本土出身の人種が南方に移り住んだことによってできあがった独特のものです。そしてケルティックミュージックも元々ヨーロッパに広く住み着いていたケルト人が西へと向かい、アイルランド島に住みつき、そこで築き上げられました。両方とも自然を崇拝し多くの伝説が存在する文化であり、沖縄には中国、アイルランドには大英帝国(イギリス)という強大な勢力が隣接していたこともオリジナリティーあふれる音楽文化発生の共通点として挙げられます。


 今回のホームページ作成を通して僕達が学んだことは、音楽というのは人間にとってユニバーサルなコミュニケーション手段であり、全世界の人と感性を分かち合える素晴らしい「言語」だと思います。地域は違っても悲しい音を表現したい時は悲しい響き、逆に楽しい雰囲気を出したい時には楽しい響きを、どの音楽を聞いても僕達は感じ取ることが出来ると思います。それだから、人間がいる限り、それぞれの音楽文化はこれからも発達していくでしょう。そして僕達はこれからもずっとこの大好きな音楽を追いかけ続けて行くでしょう。Thank you for Music!!

2003年3月31日 桐谷昌樹

 

戻る