このページでは、日本・アメリカ・中国の3カ国の高校生を対象とした調査の結果をまとめてあります。
また、1980年に日本とアメリカで実施された第1回調査の結果とも比較しています。

1 学校生活への適応
●日本
日本の高校生の8割は「学校生活は楽しい」と答えました。しかし、その反面、「この学校のやり方に不満を感じる」「学校を休みたい」「学校の外での生活のほうが楽しい」「校則がなければよいのに」「授業をさぼりたい」という者がいずれも7割以上(「よくある」と「たまにある」の合計)となっています。学校生活の楽しさの背後には、多くの不満が存在していることがわかります。

●アメリカ
アメリカでは「学校生活は楽しい」と「よく」感じている者が9.2%に過ぎませんが(「たまに」を含むと43.3%)、「学校のやり方によく不満を感じる」者が24.2%で、三カ国の中で最も少ないです。一方、「先生に親しみをよく感じる」者が42.4%と最多でした。

●中国
中国では「学校生活は楽しい」と認めながら、学校に多くの不満を持っています。ただし、日本と違っているのは、勉強しようとする気持ちが強いため、「学校での生活に張り合いを感じる」「この学校の生徒であることを誇りに思う」「授業外での先生との接触に満足している」「先生に親しみを感じる」という肯定率も高いです。学校との一体感がとても強いようにみえます。

1980年の第1回調査と比べてみると、日本では、「他の高校に変わりたい」「今いるクラスに溶け込めない」「学校を休みたい」早く社会に出て働きたい」「学校の外での生活のほうが楽しい」「授業外での先生との接触に満足している」「校則がなければよい」「授業をさぼりたい」という者がいずれも多くなり、一方、「この学校の生徒であることを誇りに思う」者が少なくなっています。
2 授業観
「授業が難しすぎる」「学校生活になかなか適応できない」「先生の教え方がよくない」「勉強する習慣が身についていない」に対して、「全くそう思う」という者が日本は最も多く、そして第1回の調査と比べてみても、以上の項目の肯定率が高くなっています。
3 学校の教科、指導についての意見
●日本・・・日本の高校生は「職業科目」と「実技、実習」を希望しています。
●中国・・・中国の高校生は「実技や実習・実験」と「進学指導」を学校側に強く求めています。
●アメリカ・・・アメリカの高校生はどの項目に対してもそれほど強く認めませんでした。
*「受験指導」や「就職指導」においては三カ国ではあまり差がありませんでした。

1980年の第1回調査と比較してみると、日本では、「職業科目に力を入れるべき」、「実技や実習・実験に力を入れるべき」、「受験に役立つ学習指導に力を入れるべき」について、いずれも賛成率が高くなり、技能勉強をより重視するようになっていることがわかります。
4 日常生活
(1)学校以外の友達と会う
日本とアメリカの6割強の生徒が週に何回か学校外の友達と会っていますが、中国の高校生の約7割が「学校以外の友達とは殆ど合わない」ようです。

1980年の調査と比べると、日本もアメリカもだいぶ変わり、学校外の友達と会う時間がかなり減ってしまっています。特に日本では、「殆ど毎日」という者が1980年の47.7%から今回の11.5%に減少し、その反面、「ほとんどしない」のが2割以上増えてきました。

(2)読書
日本とアメリカでは「ほとんど読書しない」高校生が5割います。中国は2割未満です。

*日本の高校生は1980年調査のときから読書をしない者が多く、いまは更に少し増えています。ただし、「毎日」読書する者も多少増えています。

(3)友達と電話やメールでやり取りする
「ほとんど毎日」友達と電話やメールでやり取りする生徒が、日本は7割弱に達し、アメリカより2割多く、中国との差が更に大きくなっています。

(4)パソコンでチャットする
「ほとんどしない」という者が日本85.7%、アメリカ44.5%、中国63.9%でした。日本の高校生は電話やメールを使って友達とやり取りをするのが好きですが、「パソコンでチャットする」のを好まないようです。アメリカの2割以上の高校生が「ほとんど毎日パソコンでチャットしている」。

(5)家族と話しをする
「ほとんど毎日する」という者が日本78.7%、アメリカ67.0%、中国32.5%となっています。
20年前と比べると、日本とアメリカの高校生が家族とよく会話するようになっています。特にアメリカの変化が著しいです。

(6)新聞を読む
「ほとんどしない」という者が日本34.3%、アメリカ37.2%、中国16.6%でした。

(7)音楽を聴く
「ほとんど毎日」という者が日本68.1%、アメリカ91.1%、中国48.4%となっています。
*また、日本の高校生は音楽との接触が20年前とはあまり変わりません。
5 校外学習機会の利用
●日本・・・日本では半数以上の高校生は「塾」や「校内補習」を利用しています。「大学受験の模擬試験」の経験者が25.7%となり、三カ国で最も多く、対して「パソコンでの勉強」の経験者が1割あまりに過ぎず、三カ国で最も少ないです。
●中国・・・中国の高校生はよく校外の学習機会を利用します。「塾や予備校」を利用している者が7割強に達し、「家庭教師」の利用者も4割となり、三カ国で最も多くなっています。
6 家での勉強時間
平日の家での平均勉強時間は、日本で50分、アメリカで60分、中国で147分と、中国が遥かに多くなっています。
*日本の高校生が20年前には、家での平均時間が1時間40分でしたが、いまはその半分に減少しました。


30分きざみに各勉強時間の分布をみると、日本の高校生の中に、家での勉強は「ほとんどしない」という者が5割を超えました。これに対して、アメリカは26.9%、中国は4.1%となっています。
7 パーソナリティー特性
全体をみると、日本の高校生はとても自己否定的です。「自分はだめな人間だと思うことがある」という者が73.0%も達し、アメリカと中国を大きく上回っています。また、「自分にはあまり誇りに思えるようなことはない」「成功するためには努力より運のほうが重要である」についても肯定率が最高でした。その反面、「私は積極的な人間である」「私は他の人々に劣らず価値のある人間である」「私は人並みの能力がある」「全体としてみれば、私は自分に満足している」「計画を立てるときは、それをやり遂げる自信がある」では、日本の肯定率が最低でした。

20年前の調査結果と比べると、日本では「私には人並みの能力がある」の肯定率だけが低くなっている。ほかのすべての項目は肯定率が高くなっている。自己否定しながらも現状容認、自己満足となっていることがわかります。アメリカの高校生は20年前と比べたら、より自己満足的で、自信をもつと同時に、現状容認的になっています
8 生き方
「将来のことをしっかり考えるべきだ」という者が日本29.9%、アメリカ42.6%、中国55.8%と、日本は最低でした。一方、「いまが楽しければそれでよい」という者が日本15.7%、アメリカ14.0%、中国7.6%となっています。
9 人生を影響するもの
「高校の成績」と答えた者が日本32.2%、アメリカ68.3%、中国40.3%と、三カ国ともそれぞれのトップ要因と挙げています。そのほかに「高校や大学のランク」も三カ国の高校生にとって、大事な要因の一つです。また、「親の期待」はアメリカと中国の高校生にかなり影響を与えますが、日本の高校生にはあまり影響がないようです。日本の高校生にとっては、親の期待より、友人の意見のほうが遥かに影響力が強いのです。
10 現在の夢
日本の高校生が最も望んでいるのは、「思い切り遊んだり、好きなことをしたりすること」だった。そのほかに「自分の趣味や特徴を生かすこと」「友人関係がうまくいくこと」「自分で自分の道を決めること」も多くあげられました。アメリカでは、「希望の大学に入学できること」「自分の趣味や特徴を生かすこと」「成績が上がること」がベストスリーとなっています。また、中国では「希望の大学に入学できること」一項目に集中しました。
11 希望する教育水準
日本の高校生は希望する学歴は三カ国の中で最も低く、「4年制大学まで」と希望する者が36.4%と、トップとなっている。その次は「専門・専修学校まで」です。アメリカの高校生の6割以上は4年制大学以上の学歴を希望し、中国の高校生の6割は大学院までと希望しています。

20年前と比べると、日本は高学歴志向が弱くなり、アメリカはその反対で、高学歴志向が強くなっています。
12 学校選択の基準
●日本・・・日本では「好きな専門があること」がトップとなり、その次は「就職しやすいこと」でした。また、「学費が安い」を選んだ者が4割を超え、発展途上の中国の1割未満の数値と比べると、非常に現実的であるといえます。
●アメリカ・・・アメリカでは「就職しやすい」と「好きな専門があること」の2項目が最も多くあげられ、そのほかに「学問水準が高いこと」と「一流であること」も4割の高校生に重視されています。
●中国・・・中国では、「好きな専門があること」「学問水準が高いこと」「一流であること」はベストスリーとなり、6割5分以上の選択率です。また、「大都会」を選んだ者も日本とアメリカより遥かに多くなっています。学費が安いこと、親の住居に近いこと、就職しやすいことなどの現実問題はすべて重要視されないのです。
13 将来つきたい職業
日本では最も多いのが「公務員」(18.6%)で、他の職種に対する選択が多様化しています。中国では、「会社の管理者」「会社経営者」「マスコミ」「弁護士や裁判官などの法律家」「医師」などの順となっています。また、アメリカではシングルアンサーのため、各項目の比率が低く、最も多いのは「医師」でした。
14 職業選択の基準
●日本・・・日本の高校生が最も重視するのは「安定した仕事」「趣味がもてる仕事」「人間的な触れ合いを期待できる仕事」でした。
●アメリカ・・・アメリカでは「安定した仕事」と「趣味がもてる仕事」が最も多く挙げられましたが、「経験がある仕事」「社会的評価の高い仕事」もかなり重視さています。
●中国・・・中国では、高校生の75.8%が「趣味がもてる仕事」をあげ、断然トップになっています。中国の高校生にとっては、安定感や賃金についての関心よりは、興味関心をもてる仕事への関心が強いようです。

1980年の第1回の調査結果と比べると、日本の高校生もアメリカの高校生も「趣味がもてる仕事」「自由にやれる仕事」「人間的触れ合いを期待できる仕事」に対する関心が低くなっています。また、アメリカでは「経験のある仕事」「安定した仕事」を強く求めるようになりました。経済高度成長期の1980年と比べ、日本とアメリカの高校生がかなり控えめになっていることがわかります。
15 人生目標
●日本・・・日本では、1位が「親友をもつこと」、2位が「自分で自分の人生を決めること」で、いずれも7割を超えた。最も不人気だったのが、「両親や親類のそばに住むこと」と「高い社会的地位につくこと」でした。
●アメリカ・・・アメリカでは「自分にあった仕事で成功すること」「よい結婚相手を見つけ、幸せな家庭生活を送ること」「安定した仕事につくこと」はベストスリーとなっています。
●中国・・・一方、中国の高校生の目標がとても多く、「幸せな家庭」、「成功する仕事」、「親友をもち」、「自己決定できる」など、完璧な人生を求めようとしますが、「世の中の様々な不公正を無くすために活動すること」や「子どもを持つこと」「親のそばに住むこと」には無関心です。「金持ちになること」「高い社会地位につくこと」に関しては、日本とアメリカの高校生より強く求めます。
*第1回目と比較してみると、日本ではほとんどの項目にわたって選択率が少なくなっています。ただし、「親元からの自立」「世の中の不公平を無くすための活動」「子どもをもつ」では多くなっています。



この調査結果は、日本青少年研究所が2002年に調査したものを引用しました。