●十干とは・・・甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸のこと

古代中国で考えられ、日本に伝えられました。十二支と合わせて干支(「かんし」または「えと」)といい、暦の表示などに用いられます。五行に当てはめて、2つづつを木・火・土・金・水(もく・か・と・こん・すい)にそれぞれ当て、さらに陰・陽を割り当てています。日本では陽を兄、陰を弟として、例えば「甲」を「木の兄」(きのえ)、「乙」を「木の弟」などと呼ぶようになりました。「干支」を「えと」と読むのは、この「兄弟」(えと)に由来します。また、十干は天干(てんかん)ともいいます。

十干は、ものの階級・等級を定めるために使われることもあります。


十干と読み 五行による表記 それぞれの字義
(コウ) 木の兄(きのえ) 甲(よろい)。万物が種の甲を破って出ること。
(オツ) 木の弟(きのと) 軋(あつ)と韻が通じる。万物が軋々(物が集まり生じるさま)と伸び出ること。
(ヘイ) 火の兄(ひのえ) 炳(へい)。万物が生じて炳然(あきらかに)とあらわれること。
(テイ) 火の弟(ひのと) 万物が丁壮(さかん)になること。
(ボ) 土の兄(つちのえ) 茂(も)と同じ。万物がさかんに茂ること。
(キ) 土の弟(つちのと) 起(き)。屈していたものが起こること。
(コウ) 金の兄(かのえ) 更(こう)。万物が更まること。
(シン) 金の弟(かのと) 新(しん)。あらたになること。
(ジン) 水の兄(みずのと) 新(しん)。あらたになること。
(キ) 水の弟(みずのと) 揆(き)。万物が揆然(のりを持つさま)として萌え出ること。



●十二支とは・・・子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥のこと

古代中国で考えられ、日本に伝えられました。木星が約12年で天球を一周することから、その位置を示すために天球を12の区画に分けて、それぞれに名前を付けたのが十二支の由来とされています。実際には、木星は月や太陽と逆方向に天球を回るので、木星とは逆回りに天球を巡る太歳という仮空の星を考え、太歳が在する区画の十二支がその年の十二支ということにしました。元々は木星の運行によって年を識別するための十二支でしたが、12という数が1年の月の数と同じであることから、月を表すのにも用いられるようになりました。さらに、時刻や方位の表示にも用いられるようになりました。正午(昼の12時)や子午線(南北を結ぶ線=経線)というのはこれに由来します。

十二支の各文字は、草木の成長を象徴したものとされています。また、各十二支には動物が割り当てられています。元々十二支は動物とは関係ありませんが、人々が暦を覚えやすくするために身近な動物を割り当てたと考えられています。

十干と合わせて干支(「かんし」または「えと」)といいます。ただし、一般には「干支」(えと)といえばこの十二支のことを指すことが多いです。


十二支と読み 和読み 動物 時刻 方位 五行 陰陽 それぞれの字義
子(シ) 11月 0時 「子」は「孳」(し:「ふえる」の意味)で、新しい生命が種子の中に萌(きざ)し始める状態を表しているとされます。
丑(チュウ) うし 12月 2時 北東微北 「丑」は「紐」(ちゅう:「ひも」「からむ」の意味)で、芽が種子の中に生じてまだ伸びることができない状態を表しているとされます。
寅(イン) とら 1月 4時 北東微南 「寅」は「?」(いん:「動く」の意味)で、春が来て草木が生ずる状態を表しているとされます。
卯(ボウ) 2月 6時 「卯」は「茂」(ぼう:しげる)または「冒」(ぼう:おおう)で、草木が地面を蔽うようになった状態を表しているとされます。
辰(シン) たつ 3月 8時 南東微北 「辰」は「振」(しん:「ふるう」「ととのう」の意味)で、草木の形が整った状態を表しているとされます。
巳(シ) 4月 10時 南東微南 「巳」は「已」(い:「止む」の意味)で、草木の成長が極限に達した状態を表しているとされます。
午(ゴ) うま 5月 12時 「午」は「忤」(ご:「つきあたる」「さからう」)で、草木の成長が極限を過ぎ、衰えの兆しを見せ始めた状態を表しているとされます。
未(ビ) ひつじ 6月 14時 南西微南 「未」は「味」(み:「あじ」の意味)で、果実が熟して滋味が生じた状態を表しているとされます。
申(シン) さる 7月 16時 南西微北 「申」は「呻」(しん:「うめく」の意味)で、果実が成熟して固まって行く状態を表しているとされます。
酉(ユウ) とり 8月 18時 西 「酉」は「{糸酉}」(しゅう:「ちぢむ」の意味)で、果実が成熟の極限に達した状態を表しているとされます。
戌(ジュツ) いぬ 9月 20時 北西微南 「戌」は「滅」(めつ:「ほろぶ」の意味)で、草木が枯れる状態を表しているとされます。
亥(ガイ) 10月 22時 北西微北 「亥」は「{門<亥}」(がい:「とざす」の意味)で、草木の生命力が種の中に閉じ込められた状態を表しているとされます。



●干支で示すもの

干支は上でも紹介したように、年、月、日、時間、方位などを示すためにも使われ、それらの吉凶を表わすようにもなりました。例えば、方位は北から東回り(時計回り)に子、丑、寅…と十二等分します。すると北東、東南、南西、西北が表現できないため、中国では易の八卦(はっけ)に基づいた坎、艮、震、巽、離、坤、兌、乾を用いて表現していました。日本では、北東(艮)は十二方位の丑と寅の中間なので丑寅(うしとら)、同じように、東南(巽)は辰巳(たつみ)、南西(坤)は辰巳(たつみ)、西北(乾)は戌亥(いぬい)とも呼んでいました。陰陽家は方位神(ほういじん)と呼ばれる方位の吉凶を司る神を祭り、例えば今年はこの方向に嫁にいってはいけないなどと、暦上に記していました。方位神は現在でも一部の暦や占いなどで使用されています。


方位神