アメリカの少年法(the Juvenile Act)の中では、実名報道や写真公開は一切認められていません。

the Juvenile Act の適用年齢は、国や州によって異なります。成人扱いになる年齢は、

  イギリス→10歳〜  フランス→13歳〜
  ミズーリ州&カリフォルニア州→14歳〜  イリノイ州→15歳〜  ニューヨーク州→13歳〜  オレゴン州→12歳〜

ただし、ニューヨーク州やオレゴン州などのように、
  「殺人の場合は、少年法が適用される年齢でも成年扱いとする」
との規定がある州もあります。


日本の少年法「改正」法案は、刑事処分を適用する年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げ、厳罰化をはかるものです。
この厳罰化の先例としてあげられるのが、アメリカです。

 アメリカは1970年代末から、極端な厳罰化を進めました。
重大犯罪については、家庭裁判所から刑事裁判所に移送できるようにしたり、
初めから刑事裁判所の管轄下に置いてしまう、という方法により、刑事処分の適用を積極的に拡大しました。

 しかし、アメリカ少年法の厳罰化は、完全な失敗でした。

少年法を厳罰化しても重大犯罪を抑止する効果がなかった、というのが、過去の研究の結論です。
逮捕者数の統計を見ても、厳罰化を行った年代の少年による殺人は、約2.5倍にまで増えています。
少年の殺人の増加はすべてによるもので、少年の銃規制法違反も激増しました。
同じ時期、少年の麻薬犯罪も激増しました。

 この背景には、社会的混乱や矛盾の中で、家庭や地域社会が崩壊し、
少年たちが将来への希望や社会への理想を失ってしまった、というアメリカ社会の病理があります。
厳罰化に抑止効果がないのは当然です。

 また、教育や社会復帰を目的とした保護処分を受けた場合に比べ、
長期拘禁
の刑罰を科された場合の方が、後の再犯率が高いという傾向があります。
少年が家族や社会生活から長い間隔離され、社会復帰の機会を奪われれば、結局、再犯率が高まるのです。

 非行防止のために真に必要なことは、心と社会環境の両面にわたり子どもたちが直面している問題を解決し、
子どもたちが希望と理想をもって生きていけるような社会を創造することです。
また、非行をした少年も、それを克服させるための厳しくも暖かい教育的支援の中でこそ心を開き、
人間の大切さを自覚することができるようになります。
このとき、被害者の痛みや苦しみを含め、自分の非行の意味や責任を心底理解することができ、
再犯防止と被害者への償いも可能となるのです。

 少年法の厳罰化に頼っても問題は解決しません。
それによって得られる「安心感」は、偽りのものにすぎません。
むしろ、真の課題が放棄されることで、いっそう問題を深刻化させます。

 アメリカ少年法の厳罰化の失敗は、これらのことを教えてくれるように思います。