少年法は、20歳未満の人が罪を犯した時の取り扱い方を決めた法律で、1948年に作られました。
犯罪に対しては刑法で刑務所に入れたり、罰金などの刑罰が定められています。


しかし少年法では、少年が犯罪を犯したときには、まだ判断能力が十分ではないと見なし、
教えさとして一人前の大人になるよう手助けする仕組みを設けています。
特に
14未満の少年は未熟で判断力がないので刑法に従って罰することはしないと決めています。
当初は16歳未満でしたが、10代による凶悪な事件が続いたため、2001年4月に14歳未満に改められました。

少年法の第1条、つまり一番最初には、こう書かれています。

「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年及び少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。」

少年が健全に育つように、非行のある少年に対しては性格の欠点をなおして正しくするような指導をしたり、また少年の暮らす環境を考えるといった保護処分を行うとともに、少年やその少年に悪い影響を与える成人に、特別な措置をとるということです。

つまりこの少年法という法律は、罪を犯した少年を厳しく罰するための法律というわけではなく、
正しい大人になるように導く法律であると言えるのです。


*前提*

「少年」・・・・20歳に満たない者(女性も含みます)
「成人」・・・・満20歳以上の者
「保護者」・・・少年に対して法律上監護教育の義務がある者、少年を現に監護する者


第2章には、この法律の対象となる少年が定められています。

1.罪を犯した少年
2.14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年

3. @保護者の正当な監督に従わない性癖がある。
   
A正当な理由がなく、家に寄りつかない。
   
B犯罪性のある人、不道徳な人と交際し、いかがわしい場所に出入りする。
   
C自分、または他人の道徳心を害する行為をする性癖がある。
 
これらの事実があり、将来罪を犯して刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年

家庭裁判所は、これらの項目に当てはまる14歳に満たない少年については、都道府県知事または児童相談所長から送致を受けたときに限り、審判を与えることができます。



罪を犯した時に18歳に満たなかった者に対しては、死刑が科される事はありません。
死刑を科すべき時には、無期刑が科されます。

??無期刑って??
  終身拘禁(一生涯とらえてとどめておく事)する自由刑。
 自由刑とは、自由を剥奪(取り上げること)する刑の事です。
 テレビや新聞でよく見る「無期懲役」と「無期禁錮」の総称です。
 10年を経過すると、仮釈放が可能となります。
 仮釈放は、刑期が終了する前に、仮に釈放する事を言います。
罪を犯した時に18歳に満たなかった者に対しては、無期を科すべき時でも、
有期懲役または禁錮
を科することができます。
この場合においては、10年以上15年以下において言い渡します。

少年に対して有期懲役または禁錮を言い渡す場合は、短期は年、長期は10年を越えることはできません。

一番最後に「雑則」として、次のことが定められています。

  家庭裁判所審判により、少年の時に犯した罪によって公訴された者については、
  氏名、年齢、職業、住居、容貌など、本人とわかるような記事または写真を、新聞紙などの出版物に掲載してはいけない。

この法律については、いろいろな意見があるようです。  →→ 「少年法の問題点」へGO!!


日本の少年法では罪を犯した少年の写真、名前、年齢、住所などという情報は一切公開しないようにしてあります。

これは、その少年(罪を犯した時に少年だった者)のプライバシーや人権を守る法律です。

成人の場合は本人の情報が公開されます。

同じ罪を犯した者なのに、少年であればプライバシーが守られること、罪を犯した少年を保護するということに被害者側の人からは不満の声もあがっています。

ではなぜ少年法はそのようなことをするのでしょうか?

それは少年法の目的にあります。

そもそも少年法は非行を犯してしまった少年を矯正するためにつくられた法律なのです。

名前などの情報が知れ渡ってしまうと、せっかく自分の犯してしまった罪に反省し、新しく出直そうと社会に復帰した少年はもとの生活に戻れなくなる可能性があります。

みなさんはどう考えますか?

→→→BBSに自分の意見を書き込む

子どもが「強盗」をした場合を例にして説明してみましょう。

仮にあなたが中学3年生だとします。
ちょっとした小物がほしくてできごころから万引きしたところ、店員に見つかって腕をつかまれた。こわくなったりパニックになったりして逃げようとあせって腕を振り回し、店員が転んでケガをした、としましょう。これはどういう犯罪になるのでしょうか。

これだけのことでも、法律でいうと強盗致傷(ごうとうちしょう:盗みをしてケガをさせたということ)という怖い名前がつく可能性があります。
こういう場合、実際には謝って親が弁償して勘弁してもらえることが多いでしょう。
しかし、謝り方が下手だったり、たまたまケガがひどいため、店の人が怒って警察につきだすこともあり得ます。
そんなとき、強盗致傷だということで大人と同じように最低でも懲役7年、重ければ無期懲役なんていうことになったら、どうでしょうか。
それでは困りますね。

子どものする犯罪は大人のする犯罪とは違う面があり、自分の行為の意味や結果の予測についての判断が未熟なため、年齢が下がるにしたがってごく普通の子どもでも、その場の状況次第で重大な犯罪になってしまうことがあるのです。
もちろん軽い犯罪ならやってもいい、というわけではありませんが、子どもの場合には、やったことの結果だけで判断するのではなく、どういう気持ちでやったのか、そういう行動をとった原因や背景は何なのかを、大人以上によく考えてみる必要があるのです。

少年法では、警察や裁判所はそのへんのことを理解したうえで、事件の状況や子どもの発達状態に合わせて、扱い方を変え、その子どもを罰するよりも、その子が反省して立ち直るための工夫をしなければいけない、と決めているのです。
これを少年法の保護主義、あるいは保護処分と呼びます。

大正11年        少年法公布
昭和23年7月15日  少年法改正
平成12年11月     少年法再び改正
その改正で変わったことを、おおまかに2点だけ説明します。

(1)被害者への救済措置が盛り込まれたこと
   今まで、犯罪の被害者被害者の遺族は、ほとんど国から何もしてもらえない状態でした。
  今回の改正で、少年の保護に反しない範囲で被害者側が事件のことを知ったり、意見を言ったりできるようになりました。
  しかし、被害者側への救済はまだまだ不充分です。
  マスコミからプライバシーを守ったり、生活を安定させたり、傷ついた心をケアしていくような制度がもっともっと必要です。

(2)保護主義の否定=「厳罰化」 
   子どもをもっと厳しく罰しようということになりました。
  保護主義の考えが完全に否定されたわけではありませんが、保護主義の大切さがそこなわれたという見方もあります。

「改正」の理由として、子どもといっても前より成長が早く大人並みになった、犯罪の年齢も下がって凶悪事件が増えた、生活に困っての犯罪よりも遊び型の犯罪が増えた、だからきちんと大人並みに刑罰を与えて責任を持たすことが必要だ、犯罪被害者から見ても少年院という処分は甘すぎる、などという意見が出されました。
少年法が改正されて3年がたった今でも、これらについては実に様々な意見が出ています。



アメリカの少年法(the Juvenile Act)の中では、実名報道や写真公開は一切認められていません。

the Juvenile Act の適用年齢は、国や州によって異なります。成人扱いになる年齢は、

  イギリス→10歳〜  フランス→13歳〜
  ミズーリ州&カリフォルニア州→14歳〜  イリノイ州→15歳〜  ニューヨーク州→13歳〜  オレゴン州→12歳〜

ただし、ニューヨーク州やオレゴン州などのように、
  「殺人の場合は、少年法が適用される年齢でも成年扱いとする」
との規定がある州もあります。


日本の少年法「改正」法案は、刑事処分を適用する年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げ、厳罰化をはかるものです。
この厳罰化の先例としてあげられるのが、アメリカです。

 アメリカは1970年代末から、極端な厳罰を進めました。
重大犯罪については、家庭裁判所から刑事裁判所移送できるようにしたり、
初めから刑事裁判所の管轄下に置いてしまう、という方法により、刑事処分の適用を積極的に拡大しました。

 しかし、アメリカ少年法の厳罰化は、完全な失敗でした。

少年法を厳罰化しても重大犯罪を抑止する効果がなかった、というのが、過去の研究の結論です。
逮捕者数の統計を見ても、厳罰化を行った年代の少年による殺人は、約2.5倍にまで増えています。
少年の殺人の増加はすべてによるもので、少年の銃規制法違反も激増しました。
同じ時期、少年の麻薬犯罪も激増しました。

 この背景には、社会的混乱や矛盾の中で、家庭や地域社会が崩壊し、
少年たちが将来への希望や社会への理想を失ってしまった、というアメリカ社会の病理があります。
厳罰化に抑止効果がないのは当然です。

 また、教育や社会復帰を目的とした保護処分を受けた場合に比べ、
長期拘禁
の刑罰を科された場合の方が、後の再犯率が高いという傾向があります。
少年が家族や社会生活から長い間隔離され、社会復帰の機会を奪われれば、結局、再犯率が高まるのです。

 非行防止のために真に必要なことは、心と社会環境の両面にわたり子どもたちが直面している問題を解決し、
子どもたちが希望と理想をもって生きていけるような社会を創造することです。
また、非行をした少年も、それを克服させるための厳しくも暖かい教育的支援の中でこそ心を開き、
人間の大切さを自覚することができるようになります。
このとき、被害者の痛みや苦しみを含め、自分の非行の意味や責任を心底理解することができ、
再犯防止と被害者への償いも可能となるのです。

 少年法の厳罰化に頼っても問題は解決しません。
それによって得られる「安心感」は、偽りのものにすぎません。
むしろ、真の課題が放棄されることで、いっそう問題を深刻化させます。

 アメリカ少年法の厳罰化の失敗は、これらのことを教えてくれるように思います。