53番
出典:「拾遺集」より
嘆
なげ
きつつ ひとり
寝
ぬ
る
夜
よ
の
明
あ
くる
間
ま
は
いかに
久
ひさ
しき
物
もの
とかは
知
し
る
右大将道綱母
うだいしょうみちつなのはは
■口語訳
あなたが来てくださらないさびしさを、嘆き哀しみながら一 人で夜をすごす私にとって、夜が明けるまでの時間が、どん なに長く感じられるものか、あなたはご存じでしょうか。き っとご存じないでしょうね。
■作られたワケ
夫の摂政兼家には大勢恋人がいたので、めったに道綱母 を訪ねて来てくれませんでした。ある日、兼家が夜遅くに訪 ねて来ました。しかし、道綱母は門を開けず、兼家は怒って 帰りました。そして次の日、兼家に送った歌です。
■作者のプロフィール
右大将道綱母(937〜995)
摂政兼家と結婚し、道綱を生みました。日本の三美人の一人と言われ、和歌や文章に優れていました。 兼家との満たされぬ結婚生活をつづった「蜻蛉日記(かげろうにっき)」が有名です。