70番
出典:「後拾遺集」より
さびしさに
宿
やど
を
立
た
ち
出
い
でて ながむれば
いづこもおなじ
秋
あき
の
夕暮
ゆふぐ
れ
良暹法師
りょうぜんほうし
■口語訳
あまりの寂しさに耐え切れず、我が家を出て、あたりを眺 めてみたが、なるほど、どこも同じだなあ、この秋の夕暮 れの寂しさは。
■作られたワケ
良暹法師は比叡山延暦寺にいましたが、他の僧たちに嫌気がさし、大 原の里に小屋を建てて暮らし始めました。しかし、「やはり夕方にな ると心寂しいなあ」と思い、この歌を作りました。
■作者のプロフィール
良暹法師(?〜?)
良暹法師は、伝記のはっきりしない人ですが、決まった寺院に属さず、各地を旅して暮らしていたようです。 華やかな平安時代の貴族社会とは反対の、こういう地味な生活の中から、新しい歌が芽生えました。