82番
出典:「千載集」より
思
おも
ひわび さても
命
いのち
は あるものを
憂
う
きにたへぬは
涙
なみだ
なりけり
道因法師
どういんほうし
■口語訳
つれない人のことを思い、悩み、悲しんでいても、それでもやはり死にも しないで命はなんとかとりとめているのに、辛さに耐え切れず、流れてし まうのは涙であったよ。
■作られたワケ
道因法師は、若い頃馬之助と言い、朝廷の馬を扱う役人 でした。その時、好きな人がいましたが、「馬の世話をする役人なんて!」と冷たくあしら われ、とても辛かった時に作った歌です。
■作者のプロフィール
道因法師(1090〜?)
在俗の時は、藤原敦頼といい崇徳院に使えていました。 道因法師は、気性の激しい人で、歌の良し悪しで人と争ったりしましたが、それだけ熱心さも 評価されていました。八十歳をすぎて出家してからも、住吉大社へ「いい歌が作れますように」とお参りをしたり、歌道にとても熱心な人だったといいます。