86番
出典:「千載集」より
嘆
なげ
けとて
月
つき
やは
物
もの
を
思
おも
はする
かこち
顔
がほ
なる
我
わ
が
涙
なみだ
かな
西行法師
さいぎょうほうし
■口語訳
嘆き悲しめといって、月は私に物思いをさせるのだろうか。 いや、そうではない。本当は恋のせいなのに、まるで月の せいであるかのように、恨みがましく流れる私の涙であっ たよ。
■作られたワケ
佐藤義清(西行)が北面の武士として上皇の御所を守って いた頃、中宮のことを好きになり、あきらめようと出家し ました。西行は京都の嵯峨や吉野山などの庵で暮らしなが ら、全国を旅していました。ある時、西行は中宮の幻を見 て、まだ悟れなかったことを後に思い出して作ったのがこ の歌です。
■作者のプロフィール
西行法師(1118〜1190)
西行法師は、鳥羽院につかえる武士でしたが、二十三歳で出家しました。東北や四国など、全国各地へ 旅を続け、その生活の中から、歌の世界を深めていきました。