98番
出典:「新勅撰集」より
風
かぜ
そよぐ ならの
小川
をがは
の
夕暮
ゆふぐ
れは
みそぎぞ
夏
なつ
の しるしなりける
従二位家隆
じゅうにいいえたか
■口語訳
そよそよと吹きわたる六月の風に、
ナラの葉がそよげば、 この「奈良の小川」のあたりの夕暮れは、もうすっかり秋 の気配が感じられる。
だが、あの川のほとりで行われてい る
六月祓
みなづきばらえ
の行事だけが、まだ夏のしるし なのだなあ。
■作られたワケ
家隆が72歳の時、藤原家のある人に屏風歌を作ってほしいと頼まれ作った歌です。
■作者のプロフィール
従二位家隆(1158〜1237)
従二位家隆は、
権中納言藤原光隆
ごんちゅうなごんふじわらのみつたか
の子。若い頃、 寂連の養子となり歌を学びましたが、その後俊成を師としました。定家と肩をならべるほ どの歌人で、「新古今集」の選者の一人です。晩年に出家しました。