酸性雨

 私たち人類は毎年石炭32億トン、石油30億トン、天然ガス16億トンという莫大な化石燃料を使っています。
天然ガスは別として、石炭・石油は硫黄を含んでいます。
 これらを燃やすと必ず硫黄酸化物が生成され、煙と一緒に大気中に放出されます。
また、高温で燃焼する炉内では、科学的活性の低い窒素も酸素と結合していろいろなとなり大気中へ放出されます。
 硫酸や硝酸、それから大気中で生成される多くの化合物は、多くの場合大気中の水蒸気を吸収する性質を持っています。
雨や氷が形成される時に核になったり、大気中を落下する雨や雪にキャッチされて地上へ落ちてきます。
このために、大気中の硫黄酸化物と窒素酸化物などの大気汚染物質が減り、大気はきれいになります。
 様々な化合物を溶かし込んで地上へ落ちる雨や雪は、それらを含まない水よりもかなり酸性が強いのが普通です。
大気汚染物質を含まない空気中を落ちてきた雨の酸度は5.7と評価されています。
 これより酸度の強い、すなわちph値の低い雨が酸性雨ということになります。
現在、東京都の中心域に降る雨のphはほぼ4.5ですので、かなり酸性が強いということがいえます。
 酸性雨の問題は1950年代末から指摘されていました。
それ以来、被害は年々深刻に、かつ広域化しています。
酸性雨は建物のコンクリートを溶かしたり、森林や農作物を枯らしたりします。
そのためヨーロッパ中央部や北アメリカ大陸東部では広大な森林が枯死寸前になっています。
また、魚の宝庫であった多くの湖や池が死滅しています。
内海や浅沿岸では酸性雨が富栄養化の原因の一部にもなっています。
動物や人間の飲み水を汚し、それが原因で病気になった人もいます。
 
対策は・・・
 ●工場の排煙を少なくするよう、排煙から硫黄や硫酸を取りさる装置を取り付ける
 ●車に乗るのを控えて、電車やバスを利用する
 酸性雨は1つの国が気をつけるだけでは防ぐことができません。
硫黄酸化物や窒素酸化物は空気にまじって遠くの国にも運ばれます。
酸性雨を止めるためには世界中の人が協力することが大切です。



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