おとな >こどもにまつわる問題点 / 言葉遣いについて

私達の日常生活で、見過ごすことができないと思うことの一つに“言葉遣いの乱れ”があります。

この事はしばしば学生の話し言葉の特色として取り上げられます。私達の日常には聞きづらく、思いやりの欠けた言葉がたくさん使われています。しかし、最近では私達だけでなく、子供達の言葉遣いもかなり乱れているようです。特に目立つ言葉は“うざい”“死ね”“消えろ”“むかつく”“ありえない”など、胸に突き刺さるような言葉ばかり。しかし本人は、その言葉がいかに他人を傷つけるか分かっていないために軽々しく使ってしまうようです。自分が“言葉の凶器”を振りかざしている事に気がつかないのです。
 
 その原因は大きく3つあげることが出来ると思います。

一つは、メディアの影響です。子供も見るようなバラエティー番組でも、芸能人達の会話の中には配慮の足りない言葉をよく耳にします。また、キャッチフレーズなど繰り返し耳にする言葉の中にも見かける事があります。真似る事が大好きな子供達は、自分の日常生活に当たり前のように使ってしまうわけです。

二つ目は、子供をとりまく人々の言葉遣いです。先日電車の中で、若い母親と小学生くらいの子供の会話の中に、「(母)まじうざいよね」「(子)うん、むかつく」という会話を耳にしました。これは極端な例なのかも知れませんが、親子の間でこんな会話が見受けられる事は見過ごせません。本来言葉遣いを正し、思いやりのある言葉がけをする立場にあるはずの大人が、その役割を果たしていない場面も増えてきました。 

三つ目はアクション系、バイオレンス系のテレビゲームの影響でしょう。これらのゲームの目的は、ほとんどが相手を倒す、もしくは殺す事にあります。私も経験のある事ですが、ゲームをしている子供達の口からは耳を疑うような言葉が飛び交います。“死ね”“消えろ”などの言葉です。この場合、言葉を発する相手は人ではありません。たとえ数人の友達と対戦していても、それらの言葉は友達が操作しているキャラクターに向けてのものなのです。ゲームのキャラクターは痛がりません、悲しみません。いつの間にかゲームの世界と現実とが入れ代わってしまい、相手が友達であっても錯覚して同じように使ってしまうのではないでしょうか。

言葉遣いは“模倣”と“繰り返し”によって築かれていくものです。今の子供達の言葉遣いが乱れている事は、大人の言葉遣いが乱れている事を映し出していると言えるでしょう。私達は、正しい日本語を学び伝えていく事が文化の形成や思いやりのある人間関係の成立にとってどれほど大切な事か、大人がもう一度考え直す時期に来ていると思います。