主要各国の京都議定書への対応

ロシア

ロシアの最近の動き

○プーチン大統領の発言などによれば、ロシアは、京都議定書の批准に関し、同議定書批准によって得られる経済的利益に着目して、国益を踏まえた検討を行っている。
○最近のロシア政府関係者の発言を総合すると、
・イラリオノフ経済問題担当大統領顧問が、「現在の議定書の形ではロシアは批准しない」旨繰り返し発言する一方で、
・カシヤノフ首相を始めとするその他の政府関係者は、あくまで「検討中」としている。
○また、最近では、
・ロシアの他にも批准していない国はある
・ロシアは、これまで大幅な排出削減により条約の目標達成に著しい貢献をしている
・JIのルール作りが進んでいない
などの発言が繰り返されている。

プーチン大統領、政府高官の最近の発言

○2003 年9 月29 日、世界気候変動会議(於 モスクワ)開会式でのプーチン大統領の発言
「ロシア政府は、本件に関連した複雑な問題のすべてを総合的に調査しつつ、この問題を詳細に検討しており、決定はその作業が終了した後に、当然、ロシアの国益に従って行われる。」
(参考)世界気候変動会議開催中のイラリオノフ経済問題担当大統領顧問の発言(ロシア通信社の報道)
○(京都議定書は)科学的根拠に乏しく、ロシアの経済成長に制約を与えるだろう。
○世論は気候変動の否定的側面のみに人為的に集中させられているが、我が国にとってもそして地球全体にとっても肯定的側面がある。
○京都議定書は10 年間でGDP を倍にするというプーチン大統領の目標の妨げになり、逆に、GDP を倍にすることが、京都議定書に反して、1990 年の水準の104%の排出量をもたらすであろう。
○ロシアよりもさらに多く排出している米国や中国のような国々が抑制しないのに、ロシアは排出量を削減しなければならないという奇怪な状況に我々は直面してい
る。議定書が全世界的なものにならない限り、そのような義務を引き受けることは
おかしなことである。
○2003 年10 月20 日、APEC 首脳会議に先立ち、小泉総理とプーチン大統領が会談した際のプーチン大統領の発言
「ロシアとしてもこの問題を重視している、ロシアの国益にも沿う形で、それをどのように実現するか今検討しているところである。」
○2003 年11 月、フランス実務訪問の結果に関するインタビューの際のプーチン大統領の発言(ロシア大統領府公式サイト)
「仮に、ロシアのWTO加盟交渉の過程において、とりわけ、エネルギー対話の分野において、京都議定書批准問題とともに同時に過度な負担がかけられれば、(中略)ロシアはいわば両面から締め付けられることになる。このような政策、ロシアの利益に対するこのようなアプローチには、もちろん、我々は同意することはできない。」
○2003 年12 月2 日、イラリオノフ経済問題担当大統領顧問の発言
(ロシアとEUの産業関係者のラウンド・テーブル会合の際のプーチン大統領の発言を紹介)
(ロシア通信社の報道)
イラリオノフ経済問題担当大統領顧問によれば、ロシアとEUの産業関係者のRT会合において、プーチン大統領は、「現在の議定書の形は、批准に際してロシア経済の発展を制限するものであり、したがって同議定書に批准することはない」と発言した。
○2003 年12 月3 日、ツィカノフ経済発展貿易省次官の発言(日本の報道)
ツィカノフ経済発展貿易省次官は、記者団に対して、「われわれは、批准に向けて動いている」と発言。
○2003 年12 月4 日、イラリオノフ経済問題担当大統領顧問の発言(ロシア通信社の報道)
イラリオノフ経済問題担当大統領顧問は、政府は京都議定書批准に向かって前進しているというツィカノフ経済発展貿易次官の発言をコメントしつつ、同顧問は、「政府とクレムリンの間にはいかなる見解の相違もなく、昨日述べた同次官は単に誤ったのみである」と発言した。
○2003 年12 月10 日、カシヤノフ首相の発言(日本の報道)
カシヤノフ首相が日本の報道機関と会談した際に、同首相は、京都議定書批准に前向きな姿勢を示した。
○2003 年12 月11 日、COP9閣僚級円卓会合におけるベトリツキー水理気象環境モニタリング庁長官のスピーチ
「ロシアの温室効果ガス排出量は38.3%減少したのに対し、附属書U国は7.5%増加している、すなわち、ロシアは枠組条約の主要な目的達成に著しい貢献をしているだけに現在の状況は象徴的である。ロシアは、(中略)他国の温室効果ガス増加分を補填した。」
「京都議定書の署名後、京都メカニズムの活用は経済的に有益であるとの一定の期待も存在した。いまやその期待は幻想であったことが明らかとなった。(中略)JI事業の実施に関する明確な指針が欠如していることは、ロシアの産業、内外の潜在的投資家にとって京都議定書のアイデアを魅力のないものとしている。また、議定書を法的制裁と結びつける試みは議定書を国際条約から不利な条件のビジネス上の契約に変えようとするものである。」
「プーチン大統領は最近、『(気候変動という)複雑な問題の解決において世界のパートナー諸国とともに責任感をもって取り組んでいく。同時に、我々の措置がどれほど根拠があり、正しく、バランスのとれたものであるか、(中略)理解しなければならない。(中略)我々は複雑な問題を解決したいが、その問題解決の方法が衡平なものであってほしい。』と述べている。現在、まさにこれらの原則に基づいて、批准の検討のプロセスが進められている。」
○2003 年12 月16 日、イラリオノフ経済問題担当大統領顧問の発言(ロシア通信社の報道)
イラリオノフ経済問題担当大統領顧問は、「現在の形態ではロシアは京都議定書を批准しない」と発言した。同顧問によれば、「露による京都議定書批准問題は、同議定書に修正が加えられた際ににも検討される。さらに同顧問は、一層多くの国々が温暖化ガス排出の制限を負うことが不可欠である」と強調した。
2003 年12 月16 日、カシヤノフ首相の発言(ロシア通信社の報道)
訪日中のカシヤノフ首相は、「京都議定書の批准に向け準備をしている」「このテーマに関する交渉には、我々の予想以上に長い時間が割かれた。しかし、我々は批准への進路に留まっている」「ロシアは現在京都議定書批准の影響と得られるプラス面とを吟味している。我々は、他の諸国も環境保全にかかる相応の負担を引き受けることについて確信できなければならない」と述べた。
2003 年12 月17 日、カシヤノフ首相の発言(ロシア通信社の報道)
訪日中のカシヤノフ首相は、「京都議定書における諸義務を、『他の経済問題に関する国際社会との間の諸合意を踏まえて我々が解決に取り組んでいるそのほかの諸問題や課題』とは切り離さずに検討している」と発言。
2003 年12 月21 日、イワノフ外相の発言(業界誌の報道)
京都議定書に批准していない国は他にもある。すなわち、議定書の行く末が、ロシアの決定のみに結びつけられているのは誤りでないか。

ロシアの動き

2002.04.11 閣議において、京都議定書の批准の是非につき検討
  露政府内に批准について検討する政府委員会を設置し、京都議定書の批准がロシアにもたらす社会経済的影響やロシアとして取るべき施策等について更に検討を深めることとされた旨伝えられている。(京都議定書批准の正式決定は未だなされていない)
2003.06.03 仏エビアンでのG8サミットにおいて、プーチン大統領が京都議定書批准に前向きな姿勢を示した。
(6月3日付け日経新聞、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞各朝刊)
2003.9月下旬 ロシアの主催により、モスクワで「世界気候変動会議」が開催される予定
2003.6.22〜25 望月環境政務官がロシアに出張
し、ロシア国会関係者等と面会。会談の要点、以下のとおり。
  ・ロシアにとって京都議定書の締結は重要な課題。
・議定書の経済的効果及び議定書の法的側面への影響に関する追加的作業
が関係省庁において終了、関係書類をフリステンコ副首相に提出。
・これらの書類をフリステンコ副首相が検討して7月半ばまでに結論が出
る見込み。
・現在、京都議定書の批准に反対する省庁はない状況となった。
・京都議定書批准法案が議会に提出され、プーチン大統領の働きかけがあ
れば、議会において批准される見込み。
・12月の下院選挙を控えて11月までに批准するためには、9月末までに政府による決定(法案の提出)が必要。
・9月の気候変動会議までに、プーチン大統領による何らかの決定が下さ
れる見込み。(環境省ウェブサイト)
2004.11.6 京都議定書の批准法に署名したと発表