その頃。
とある民家では一つの命が、必死に生きようとがんばっていました。

炉の左側のシソに設けられた出産場所。
そこでは何日か前から、一人の妊婦が梁から下げられた産綱を力いっぱい握り締めています。
周りを取り囲むのは、女性たちのみです。
男性はというと、古老が一人、炉縁で神へ安産を祈っていました。
妊婦は大きな声で泣き、新たな命の火種を消さないよう必死でがんばっています。


何時間くらいたったのでしょうか。
古老が家から出てきました・・・・・・

「男の子じゃ。元気に泣いているぞ。よくやったもんだ。」

我が子を見ると、男は泣きながら満面の笑みを浮かべました。
すると、どうでしょう。
消えたはずの虹はこの男の家、先ほどまで分娩をしてた家の後ろからかかっています。

「この子は、きっと天が届けてくださった子だ。」
そう思って仕方がない父でした。


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