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視力についてのQ&A
Q. 小学校1年の4月では視力が悪かったのに10月でよくなりましたが、なぜですか  

A.

屈折異常のためでもあるでしょうが,そのほとんどは精神的なものだと思います。つまり,小学校1年の4月というのは環境の変化が大きく,子どもたちは極度の緊張が続いており,そのもとで行なわれる検査はいうまでもなく正確さに欠ける場合が多いものです。おとなでも,あまりの緊張に自分のとった行動などがわからないということがありますが,それと同じことだと思います。

また,4月だと字を完全におぼえていない子どももあるようですが,10月になると,友だちもでき,学校にもなれ,心身ともにリラックスした状態になってきますので,そこで行なわれた検査では通常の視力が測定できるというわけです。


Q.視力が一度よくなってもまた悪くなったり、眼科で治療していても悪くなることがありますか  

A.

視力の変動は,屈折異常のない人でも日によって,照明や疲労感その他によっても違ってきます。また,偽近視の場合も視力の変動が起こります。そのため,視力検査の日によって視力がよくなったり悪くなったりする場合があります。治療を続けているといって視力がよいとは限りません。まして偽近視が本当に治ったとしても,きわめて近視眼になりやすい条件をすでに持っている場合が多く,再び治療を続けなければならないこともよくあります。そのため,裸眼視力だけの結果で視力が「よくなった,悪くなった」と論じることはあまりよくありません。できるだけ一定の条件のもとで,十分な検査を行ない,屈折度の変化が認められ,矯正レンズの度数が強くなっている場合にはじめて視力が悪くなったといえるでしょう。日ごろの診療の経験からいっても,非常に短期間に視力低下を起こしてくる人がかなりいます。

4月の検診で正常であっても10月には屈折異常を起こしている例、半年間でレンズの度が強くなってしまった例など数多くあります。

 視力0.9,1.0,1.2の間の変動はずい分多いようですし,この変動が視力低下の始まりかもしれません。そのため,学校検診で視力の低下が少しでもあれば,やはり目の健康度をチェックする意味でも眼科医で検診を受けるべきでしょう。


Q.お父さん、お母さんが強い近視なら、子どもも強い近視になるのですか  

A.

近視には,屈折近視,軸性近視の二種類があり,そのうち軸性近視というのは遺伝が関係しているといわれ,強い近視のほとんどがそうだといわれています。したがって,両親のどちらかに強い近視があるなら軸性近視の可能性が大きく,遺伝的に子どもにも近視がでてくると考えられるわけです。

両親ともに強い近視なら,その可能性はさらに増すことになりますが,そのわりに発生する度合は少なく,たかだか3〜5%といわれています。つまり,必ず強い近視になるとは限りません。


Q.目の悪い人はなぜ目を細めるのですか  

A.

目を細めて見ると視力がよくなります。これは,カメラのしぼりを小さくするとピンボケが少なくなるのと同じで,光束が細くなると像のボケやゆがみが少なくなる(球面収差が除かれるという)ためです。もっとも,目を細める大きさが瞳孔よりも大きいときはその影響はあらわれません。


Q.視力が悪くなると頭が悪くなるというのは本当ですか  

A.

視力が悪い子どもと学校の成績との関係を調べてみると,近視にくらべ遠視の子どもの方が成績が悪いという報告があります。また,視力が悪いのにメガネをかけないで勉強した子どもとメガネをかけた子どもでは,メガネをかけた方が成績がよいという報告があります。黒板が見えにくい状態で勉強すれば,わからないこともそのままとなり学力に影響をおよぼすことになりますが,視力と学力が必ず関係があると断言することは少し言いすぎかもしれません。


Q.視力が悪いと性格がゆがむことがありますか,また事故にあいやすくなりますか  

A.

視力が悪くなることで性格がどうなるということはありません。見えにくいために適当にごまかして言ってみたり,歩いていて知っている人に出合っても,気づかずに通りすぎてみたり,相手の顔を見るために顔をしかめたりして,不快にさせてしまうことはあるでしょう。

また,事故との関係については,見えにくいと危険なものに気づくのが遅くなるため,避けるための動きが遅くなり事故にあう率も高くなると思います。また,注意力散漫になりやすくなるでしょう。

いずれにしても,メガネかコンタクトレンズで矯正して正しい視力をもっていれば何も問題はないはずです。


Q.小学校から中学,高校とすすむにつれてメガネをかける人が多くなってきますがなぜですか

 

A.

小学校1年生の場合は大体85%が遠視と乱視で,近視は15〜16%といわれています。(次表参照)

また,学年が進むにつれてメガネをかける人が多くなるのは,二つの理由が考えられます。一つは,潜在的な近視です。

つまり,小学校ではそれはど近業(勉強)の量が多くなく,本人自身も何ら不便を感じなかったものが,学年が進むにつれて近業がふえ不便を感じてきます。

もう一つは,正常であったものが,近業の量が増加したりその他の理由で屈折異常になってしまう場合です。

近視の発生は中学1〜2年に多く,高校では2〜3年に多いと発表されています(大江)。

年度別・校種別、裸眼視力1.0未満の児童・生徒   ( % )
校種 55年 56年 57年 58年 59年
小学校 19.74 19.06 18.23 18.17 19.98
中学校 38.12 36.87 36.39 35.49 36.71
高校 55.46 55.28 53.49 52.17 51.93
文部省:「学校保険統計調査」による。但し、この表は裸眼視力のみの統計であり、屈折異常の統計ではありません。
Q.日本人はなぜ近視が多いのですか  

A.

日本人は他国民に比べて非常によく働くといわれています。このために机での作業が多くなり目に負担をかけることになります。そのほか漢字などの細かい文字によって起こるともいわれています。

近視というのは近くの物を長時間見続けても疲れにくい目ですから,近業の多い現代の社会生活に順応して,近視が増えてくるのはあたり前という考え方もあるようです。

しかし正常視力は西欧人に比べてよい視力であるといわれています。その理由はぶどう膜色素が濃いために眼底内での光の散乱が少ないからだと考えられそいます。


Q.視力がもっともよい動物はなにですか  

A.

視力は,その動物の生活環境と密接な関係があります。ですから,空を飛ぶ鳥類は地上で生活する動物より視力はよいようです。なかでも,ワシやタカなどの肉食鳥の視力は人間の視力の8〜10倍といわれています。ハクトウワシは5km先の魚を見つけることができ,イヌワシは3.2km離れた体長46cmのウサギを見つけることができるようです。また,これらの鳥の調節力は人間のそれよりはるかにすぐれているため,目の前の小さな虫から,はるか遠くの獲物まで同じようによく見えるようです。

身近な動物で人間より視力のよいのは犬です。イギリスの牧場犬で,1.6km離れた主人の手信号を読むことができた例が報告されています。しかし,これらの動物たちの視力は動いているものを見分ける能力ですから,私たちがいう視力とは少し違っています。


Q.ヘビは暗闇でもみえるのですか  

A.

“ボウー”というヘビは,真暗の中で飛んでいるコウモリを捕えることができます。これは,このヘビの両眼のやや下,鼻の上にふたつの威嚇細胞というものがならんでいて,その細胞がコウモリのもっている体温(幅射熱)とか赤外線をとらえる力をもっています。これはヘビだけにあるもので,人間でいえば,ちょうど照明された物を見て,それを見つめる(焦点を合わせる)しくみになっているようなものです。しかし,本当に詳しいことは今もってわかっていません。


Q.ネコの目はなぜ暗いところで光るのですか  

A.

ネコの目の内側には光を反射する細胞層があるので,暗いところで光ってみえます。自ら発光しているわけではありませんから,光のないまったくの暗やみでは目は光りません。これは,夜行性の動物ですから,少しの光を日の中で反射させ最大限に利用しているのです。


Q.チョウやトンボなどの複眼では,どのように見えるのですか

 

A.

チョウは約1,200個の複眼で見ています。複眼というのはひとつひとつの小さな目に入った光が,明暗のある細かいつぶ(粒子)として網膜にうつり,全体として一つの像として脳に送られています。ちょうど,テレビのブラウン管や新聞の写真のようなしくみと考えてよいでしょう。また,昆虫は人間にくらべ残像が短いため,一秒に200コマくらいの像をとらえます。人間は一秒に20コマくらいですから10倍も感度がよいということでしょうか。


Q. ヒキガエルはどのように見ていますか

 

A.

ヒキガエルの目は頭に固定されています。また,ヒキガエルの見ている世界は,物が動いていないと全く見えないのです。これは,「両せい類」の視覚を研究している学者によって確かめられました。実験方法としては,おなかをすかせたヒキガエルの鼻先数cmのところにハンバーグをおいても食べなかったのが,それを動かしたとたんに舌を出して食べたそうです。このように,ヒキガエルは動くものだけ見える程度の能力をもち,飛んでいるハエやいつも触覚を動かしているアリなどを,正確に舌でねらいをつけてす早く食べることができます。


Q. 魚はどのようにして見ていますか

 

A.

多くの魚の目は左右正反対に向いてついていますから,人間と同じように左右の目を同時に使って見ることはできません。それで,左の目では左だけ,右の目では右だけを見ています。魚は人間などの空気中で生活する生物たちとは違い,水中というまったく違った環境で生活していますから,目もそれに適したものとなっています。

まず,大部分の魚の目は固定されていて人間のように上下左右に動きません。これは魚にとっては少しも不便ではなく,からだ全体が常に静止せずに動いているため目もそれといっしょに動いているからです。魚は,人間よりもかなり近視眼です。水の透明度にもよるでしょうが,水中で見通せる範囲は限られていますから,それで十分なわけです。また水中での光の屈折力は空気中のそれとは違い,たとえば人間が水中に入ると(水中メガネなしで),角膜の屈折力が水の屈折カと同じくらいなので,光は角膜でほとんど屈折しないで遠視の状態になります。魚の角膜も人間の角膜と同じで水中では光を屈折させることができませんから,水晶体が球状になっていて,屈折力を強くしています。また,調節は人間のように水晶体の厚みを変えてするのではなく,筋肉で水晶体を前後に動かして調節しています。これは,カメラのピント合わせと同じしくみです。魚眼レンズで撮った写真というのがありますが,あのような感じで魚はものを見ていると考えてよいでしょう。