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視力のいろは
■物を見るということ  

人間の視覚は,動物の世界の中で猿と全く同じです。1億個以上あるという視細胞が興奮して,目に入ってきた光,熱エネルギーを電気ェネルギーに変えて,大脳の後頭葉の視知覚皮質中枢で映像を見ています。なお,物体を写してくれる視細胞が興奮するためには,光の最も小さい粒,つまり,たった一個のエネルギーで十分だといわれています。また,目から入る知識の量は,人間が得る情報の80%以上にもなり,目の働きは大型コンピューターの数百万ビットも達するといわれています。


■人間の見る最小の物  

人間の目は,0.1mmの大きさの物を,25.4cmはなれたところで見わけられます。(0.0003ラジアンという)。また,人間の目は,直径3〜4ミクロン(0.003〜0.004mm)の穴から入る明るい光を見わけられます。

なお,ギネスブックには1972年の西ドイツ,シュツットガルト大学の報告で,1.6km以上離れた人を誰であるか見分けた女子学生がいたと書かれています。


■ 目の屈折力とジオプトリー(D)について  

目の屈折力(光を屈折させるカ)はレンズの度の単位であるジオプトリー(D)を用いて表します。焦点距離1mのレンズの度を1ジオプトリーと決め,焦点距離の逆数で表します。焦点距離が短いとジオプトリーの数値は大きくなり,焦点距離が長いと小さくなります。焦点距離が50cmなら2D,25cmなら4D,また2mなら0.5D,4mなら0.25Dというようになっています。

目の屈折力は,主として角膜と水晶体の屈折力からなっています。そのほかの組織は,普通の水の屈折率とほとんどかわりません。 

  眼の屈折力については,    

  角 膜  =40D

  ・・・・・・・・・・・・・・

  水晶体前面=5D

  水晶体後面=8・3D  } 約20D

  水晶体核 =6D

  ──────────────

  全屈折力 =60D

つまり,人間の目はかなり強い凸レンズをもっていることになります。他の水中動物を見ますと,屈折のために角膜を利用していません。そのため,角膜は屈折力も小さく,扁平です。その代わりにレンズが球形となっています。

クジラはその反対に,大きな曲率をもった角膜で十分屈折力をもっています


■赤ちゃんの視力  

赤ちゃんの場合は生まれると同時に,視力が1.0あるわけではありません。はう,立つ,などと練習して発達していくのと同じように,目も「見る」勉強をして,少しずつ発達をくりかえして十分な視力をもっていきます。

一般に,乳幼児の視力の発達は(ファンツ,1962年),

 生後1カ月  眼の前の手が動くのがわかる

   2ヵ月  0.01  4ヵ月  0.04〜0.08

   8カ月  0.1   1歳   0.2〜0.25

   1歳半  0.4   2歳   0.5〜0.6

   3歳   0.8   7歳     1.0

といわれていますが,最近では乳児の場合もっとよく見えているともいわれています。