平安時代

　平安時代には中国文化に影響を受けた衣服の名残はありつつも、国風化の傾向により日本独自の形をした、着物の基本となるような衣服が「直線裁ち」という方法で作られました。平安装束と呼ばれる貴族などの服装がその代表的なもので、衣冠束帯（いかんそくたい）や十二単（じゅうにひとえ）などの色鮮やかで優雅な服装が多く見られました。

　男性は礼服に束帯や衣冠というものが着用されていました。束帯は最高級の位の者が着る文官束帯（ぶんかんそくたい）があり、文官束帯の次に武官束帯（ぶかんそくたい）があります。衣冠は略礼装でした。また普段着として、外見が衣冠と同じような直衣（のうし）、動きやすいように作られた狩衣（かりぎぬ）、そして水干（すいかん）という狩衣に似た簡素なものを着ていました。女性は十二単、袿（うちぎ）、水干などを着ていました。

　十二単に関しては、四季の移り変わりのはっきりした日本ならではの色彩表現を使っており、様々な日本の花の色の服を何枚も重ねて着ることによって襟や袖口、裾に見られる色の移り変わりの優雅な美しさを表していることで有名な衣装です。