実験・考察





アボガドロ数を調べよう!!

では、いよいよ実験の説明。


ここではオレイン酸という物質を使って、アボガドロ数6.02×1023を実験で求めます。

水面上にオレイン酸で薄い膜を作り、その面積を測りとても小さい分子の大きさと、アボガドロ数を求めます。

準備するもの:オレイン酸、エチルアルコール、目盛り付きスポイト、水槽、

コルクの粉末(サンドペーパーなどで細かくしたもの)、ものさし、計算機等...。
少なくともこれだけあれば実験は行えます。

何のためにこの実験を行うんですか?

上で述べたとおり、この実験はアボガドロ数を求める
実験なんですが、アボガドロ数が6.02×1023である根拠を示すことで、
よりモルについて理解しやすくする為です。

実際に実験してみよう

手順


1 濃度0.1%のオレイン酸のエタノール溶液を生成します。
2 メスピペットでオレイン酸溶液1cm3が何滴に相当するか2、3回数えて、平均をとります。
3 水槽に水を入れて、コルクの粉末を水面全体に薄く振りまきます。
4 水面にオレイン酸溶液を1滴落とします。
5 コルクの粉末が排除された面積を測定します。
6 これを2、3回繰り返します。


実際にオレイン酸を落として現れた面積を写真でご覧下さい。(画像クリックで拡大)

計算してみる。

実際にアボガドロ定数NA=1molのオレイン酸の体積÷1個のオレイン酸分子の体積から
模型を使いながらアボガドロ定数NAを求めてみます。

//のあとの赤字は私たちが実際に行った際の実験結果なので、わからない時は参考にして下さい。

オレイン酸の密度を0.89g/cm3とします。〜

 まずオレイン酸の構造式がC17H33COOHですから分子量は282となります。 〜
すると1molのオレイン酸の体積Vo÷より
Vo=317.4cm3となります。

 次に手順2で求めた平均のオレイン酸溶液1mlの滴数をK
オレイン酸によってコルクが排除された面積をScm3とします。
//K=55滴 、面積=30cm3
すると溶液1滴中のオレイン酸の体積はv=0.001/K(cm3)となります。
//v=0.001÷55=1.818×10-5 (cm3)

体積=面積×厚さ だから 厚さ=体積÷面積 となりますので、 膜の厚さはDv/Sとなります。
//D=1.818×10-5÷30=6.07×10-7

 炭素や水素元素間の距離をrとします。〜
D=20rだから、rD÷20となる。
ちなみに、このDrは、構造式で言うとこの部分
//r=6.07×10-7÷20=3.04×10-8

 オレイン酸の模型を円柱と考えてみると...
一滴中のオレイン酸の体積V
V=20πr3となる。

//V=20×3.14×(3.04×10-8)-3=1.76×10-21

 アボガドロ定数NA=1molのオレイン酸の体積÷1個のオレイン酸分子の体積
ですから、NA=Vo÷V からNAが求まる。
//NA=3.17×102÷1.76×10-21=1.80×1023

実際のアボガドロ数(6.021415×1023)とはちょっとズレましたが、

桁数は正しい結果が出ました。アボガドロ数のイメージが少しは浮かんだでしょうか。
興味がある方はぜひこの実験を行ってみて下さい。


以下は実験の解説ですが、内容が難しいので、さらに探求したい人のみ読んで下さい。

オレイン酸は高級脂肪酸という酸で、C17H33COOHという構造式でできている。
高級脂肪酸は炭素元素が多いので水に溶けにくいのですが、エタノールには溶けます。
水槽の水にオレイン酸のエタノール溶液を落とすと、
COOHの部分はカルボキシル基といって、 水になじみやすい性質をもっているため、
(構造式で表すとこうなります。)
水槽の水COOHの部分は水面内に、その他の部分は水面上に浮いた状態となります。
このとき水と油にはたらく分子間力により表面張力がはたらき、
水面上に薄く広がり、分子が1列ずつにならんだ、
単分子膜という状態になります。
こうした理由により、アボガドロ数を求めることが可能になるのです。