メソポタミアとは、「川の間の土地」という意味で、川とはチグリス・ユーフラテス川のことです。およそ一万年前に栄えた世界で一番古い文明であったといわれています。
　この地方の人々は香りを大切にし、火の中に入れるとよい香りを出す植物からよい香りのする油を作り、これを入れる容器とし作られたものが

代表的な「コア・ガラス」で、およそ４０００年前に人類が最初に作ったガラスといわれています。これはメソポタミアの遺跡やエジプトの王（ファラオ）の墓からたくさん発見されています。

　宗教と香りの関係では、太陽の神・月の神などを祭る祭壇でよい香りのする煙をたたせて、汚れた人間を神の前に出られるきれいな心と体にしたのです。
　また、香料を入れてよい香りがする香油や香膏を体に塗って、香りによる化粧を行いました。 香油や化粧品に使う油は、ごま油・ヒマシ油・オリーブ油などの植物油や、牛・羊、あるいは魚の動物性の油などで、これにミルク・蜂蜜・塩を混ぜ、臭みを押さえるために香りのよいゴム樹脂などを混ぜて使いました。

　ナイル川の流域に、約一万年続いた石器時代から発展した文明がありました。
　約４６００年前のへレス王女のピラミッドからは、現在の「マニキュア」と同じような化粧道具が発掘されています。約３３００年前に作られたといわれているツタンカーメン王の墓からは、壷が見つかり、その中にはよい香りの香油が残っていました。

　 　ミイラも、香りとは深い関係があります。過去・現在・未来の思想を持ち、偉大なる王は天空を旅した後、再びこの世に生まれ変わると信じていました。そのためこの世に復活したときに魂が宿るべき肉体が必要で、亡骸を完全な形で保存しようとしました。

　ミイラを作るには、部屋に香りを焚き、香料を使った聖水で体を清め、王の体から脳と内臓を取り出して、壷に納めます。残った体の空洞には、防臭、防腐効果のある植物や麻の布で体を包み、黄金製の棺に入れ、さらにそれを石棺に納めました、このとき使われた香料植物は、いくつかありますが樹脂の没薬（ミルラ）で、ここから「ミイラ」という言葉が生じたといわれています。

　インダス川の流域には、古くから水を使った行政や農業や商業が栄えていましたが、約５０００年前に下水道が整備され、公共設備も完備した古代都市国家が作られました。また、比較的きれいなところだったとされています。
　そこではシナモン・パチュリなどの香料が産出し、交易も行われていたといわれています。

　紀元前５世紀ごろ、盛んになった仏教文化も香りとは深い関係がありました。開祖である釈迦については多くの言い伝えがありますが、インドで特に有名なものの一つに「ジャータカ（闇陀伽）」があります。

　釈迦の前世の物語で「輪廻」の思想を元にしており、釈迦が何回も生まれ変わり、菩薩(ぼさつ)としての善行を積むという、５４７の話を中心とした原始仏教経典の一つです。
　菩薩（ぼさつ）というのは仏陀（悟りの境地に達したもの）になるはずの人という意味で、「ジャータカ」では釈迦が人間や動物などに生まれ変わり、努力を続け、徳のある行いをするという説話があり、この中にいろいろな香りのことが語られています。

　現在の黄河流域を中心に、いわゆる黄河文明が興ったとされています。紀元前４５００年ごろの陶磁器の原形と考えられている壷（酒器）や食物を煮るための鼎（かなえ）は多く出土されていますが、この時代の香りに関するものではっきりとわかる出土品はありません。
　戦国時代末期の紀元前３００年ごろになると、祭のため 　

に身を清めるとか、酒への味付けとかあるいは食事のために利用された山椒・生姜などの香辛料の記録が見られるようになります。きゅうり・こしょう・くるみ・おしろい・ごまなど、食物や香料に関する言葉に西域を表す「胡」が多く見られるところから、中国の香り文化はインダス及びメソポタミア文明からの影響が大きいと考えられます。

　唐の時代、楊貴妃は美人であったばかりではなく、クレオパトラ同様、香りについても注意を払い、当時中国で流行した「体身香」によって体からはいつも芳香をだすように心掛けていました。また、当時の王や貴人の前に出るときは、沈香・麝香・丁字（クローブ）を口に含まなければいけませんでした。