イラクの神話

夜の飾り
「上なる天に、まだ名前がつけられておらず、下なる大地に、まだ名前がなかったとき」


すべての生みの親である父アプスと、母ティアマトだけがありました。
アプスは原初の真水、ティアマトは太古の海水です。そのふたつの
水が混ざった混沌の中から、神々が生まれます。 たくさんの神が
生まれ、あまりの騒がしさにたえかねた父アプスは、神々を滅ぼそうと
します。それを知った智恵の神エアは、逆にアプスを殺して
しまいます。そしてエアから生まれたのが最高神マルドゥク。
愛するアプスを殺されたティアマトは、マルドゥクに戦いを挑みます。
しかし、風を見方につけたマルドゥクによって、ティアマトは
切り裂かれてしまいます。そして、マルドゥクは切り裂いたティアマトの
体の半分を天に、もう半分を地とします。さらにマルドゥクは、
一年の十二の月に名前をつけ、さらに月をつくり、夜ごと変化する
その形によって日々を過ぎるのを知る「夜の飾り」としたのです。
月の神はシンナ、あるいはシンとよばれます。
メソポタミアでは、月神崇拝が強く、エジプトでは神々の王とされる
太陽神は、月神の息子、あるいは風の息子とされています。そして、
月神シンは癒しの神でもあり、さらに安産の神でもあったのです。



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